「KEIRINグランプリ2022の優勝候補」と言われる1人に、脇本雄太がいる。既にG1の完全優勝3回、G1の優勝回数だと7回を数える日本の競輪界のトップを走る脇本だが、KEIRINグランプリの栄冠は未だ手に入れたことがない。

KEIRINグランプリも『いつもの開催も同じように走り1着を獲るだけ』そう本人は語るが、それでは我々が面白くないではないか。

KEIRINグランプリ2022を前に、今の脇本雄太の強さの秘密を探るロングインタビューを実施。
脇本のレースに臨むメンタル面、競輪に対する向き合い方、そして将来的な目標など、様々なことを語ってもらった。

脇本雄太プロフィール

1989年生まれ、33歳(2022年時点)。科学少年だったが、友人に誘われたことをきっかけに高校の自転車部に入部、自転車競技選手としてのキャリアをスタートする。2016年のリオオリンピックに出場、2020年の世界選手権でケイリン銀メダルを獲得。東京2020オリンピックではスプリント9位、ケイリン7位の成績を収め、これを区切りとして競技の第一線を退いた。

競輪選手としては2008年に福井所属94期としてデビュー。2018年オールスター競輪の優勝を皮切りに、これまでG1を7回優勝している。東京2020オリンピック以降は長期休業があったが、復帰した2022年には2つのG1で優勝、桁違いの強さを発揮している。

慌てたら「負け」 常に主導権を握っている脇本雄太

Q:脇本選手が腰の負傷から回復した後に出場したレースを一通り見て、1つ不思議に思うことがありました。ほぼ毎回、相当後ろにさがってから、捲りをかける印象があります。これは風の影響が重要視される競輪で、影響を気にしていないような印象を受けますし、しかもラインの先頭を走ることが多いですよね?風の影響についてはどのように考えていますか?

風の影響はゼロではありません。でも競輪においては、不確定要素が多いので、風の抵抗を考えるよりはメンタル面の方が大事な気がします。風のことを考え出したらきりがないですし、どれだけ相手の不利な場面で、自分の有利な展開に持ち込めるか、その点が大事だと思います。

相手は僕と同時に加速していくことを狙っていると思います。突っ張ったり(※並走して外側を走らせること)して、僕を苦しめられる位置で走ることを狙う選手が多いです。

でも、そうなったら完全に僕の術中にはまっていることになります。相手は僕の仕掛けを待つわけで、僕より早く反応することは出来なくなります。

Q:後ろにいるけれど、“主導権を握っている”ような感覚でしょうか?

そうですね。後ろにいる時は「俺はまだ構えているけれど、先に行くならお好きにどうぞ」って感じですね。

Q:でも、流石に離れ過ぎてしまった経験はありますか?

実はたくさんあります(笑)。1番失敗したのは怪我する前のことですけど、去年のオールスターの準決勝かな?見たらわかると思います。(2021オールスター・5日目11R)そのレースは1着でしたけど、やり過ぎたって感じでした。

みんなにとっては駆け始めたタイミングでも、自分にとってはニュートラル、そんな感覚が理想です。競技でもそんな感覚を味わいました。

Q:レースでは脇本選手が慌てているのを一切感じさせないことも印象的ですが。

慌てたら“負け”です。

メンタルが重要 東京2020を経た脇本の経験

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