ゴールを探すのが楽しい

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KEIRINグランプリに向けて

ブノワ:計画的に練習される郡司選手ですが、今の一番のターゲットはもちろんKEIRINグランプリ2022かと思います。それに向けた準備や特別なことは何かやっていますか?

郡司:特別なことというほどのことではありませんが……走ろうと思えば走れるけれど、12月はレースがない状態にして、グランプリに向けて集中していますね。ナショナルチームのやり方とはもちろん規模が違いますが、オリンピックに向けた調整のような期間だと思います。1ヶ月レースがないことなんて、そうそうありませんから。

この1ヶ月を使って「やりたいこと」と「できること」の蓄えをしっかりとつけています。特別なことをしているわけではないですが、1ヶ月の重要な期間です。

ブノワ:グランプリは我々にとってのオリンピックと一緒で、たくさんの人が観ますし、かかってくるプレッシャーも大きなものだと思います。そういった大きなイベントを迎えるにあたって、メンタル面での準備は何かしていますか?

というのも、グランプリは最終日にしかレースがありません。通常は3日間か4日間、1日ずつ走って気持ちを作っていくと思いますが?

郡司:これは人それぞれで正解はないと思うんですが、僕の場合はなるべくグランプリのことを考えないようにしています。「グランプリ会場に来た」とか「この日に向けて……」とか考えれば考えるほど、空回りしてしまうので。グランプリだからといって強い想いを持ちすぎないようにしています。

ブノワ:そうお聞きすると、郡司選手が感受性が高い人だからこそ「下げよう、下げよう」としているのかなと思うんですが、どうなんでしょう?

郡司:たぶんそうなんでしょうね。力が入りすぎちゃうと実力を発揮できなくなると思っています。

ブノワ:「考えない」というのは興味深いです。競技の方では考えて考えてダメになってしまう人も多いのですが、考えて全部を落とし込んで、落とし込んだものを力にする、という側面があります。「考えない」というのは面白いです。

郡司:たぶん気持ちや気合はどうしても入ってしまうので、そうなりすぎないように「考えない」ようにしているだけ。あとは自然と「その時」になれば入っていけるものだと思っています。

僕もできれば「考えて考えて、溜め込んだものを爆発させる」ようなことができればと思っていました。ですが、自分はこれまで何度もそうしようとして失敗してきたので、今は抑えている、という形ですね。これが一番自分に合っていたのかなと思います。

KEIRINグランプリでは「自分たちが主役だ」

ブノワ:グランプリは年に1回で、誰もが勝ちたいレース。そうは言っても気合が入ってしまうのではないでしょうか?よく競輪選手養成所では「選手はギャンブルの駒だ」と言われますが、KEIRINグランプリだけは「スポーツ選手」になってしまうんじゃないかと感じます。

郡司:普段はお客さんが買ってくれて、お客さんがいてこその競輪、お客さんが主役だと思っています。でもKEIRINグランプリに関しては「自分たちが主役だ」と思って走っているところはありますね。

ブノワ:機材的な話を聞かせてください。KEIRINグランプリに向けてフレームを替えたりパーツを替えたり、何か特別なことはしますか?

郡司:初めてグランプリに出た時は舞い上がって、全部替えたんですよね。同じ製品ではあるんですが、全部新品に取り替えて。でもそれで失敗した感じがあったので、メンタル面と同じで「考えないようにしよう」と切り替えました。もちろんチェーンとか、新しくした方が良いものは替えますけれど、その他のものはグランプリだからといって替えることはしない予定です。

ブノワ:グランプリにスペシャルエディションの機材で挑む話をよく聞くので、「いつも通り」というのは興味深いです。

郡司:1ヶ月空いているので、色々試せる期間ではあるんですよね。でも気持ちとしては普段通りに、変えないようにと思っています。とはいえその時の感性で「あれっ?こっちが良いな」と思うとそっちにしちゃうかもしれないですけど(笑)

ブノワ:郡司選手は即決タイプ?それとも優柔不断な方ですか?

郡司:どちらかというと優柔不断でしたが、最近なくなってきました。「どうしようかな、こっちがいいかな」って色々迷っちゃうタイプでしたね。

ブノワ:グランプリがどのようなレース展開になるかは分かりませんが、昔ブルース・リーが言ったように「考えるな、感じろ」ができると良いですね。言うのは簡単ですが、行うのは難しい。

郡司:” Don’t think, feel “ですね。でも良い時って本当にそれができるんですよね。体が勝手に進んでいくみたいな。

競輪グランプリは取材した平塚競輪で行われる。

果たして郡司選手は1着でフィニッシュラインを駆け抜けることになるのか。

運命の日を待ちたい。

KEIRINグランプリ2022インタビュー
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