自分の持っているもので勝負する
守澤:僕は追い込みなので、集中しすぎて興奮してしまうと、余計な動きが増えてしまうんです。例えば後ろを見る回数が増えちゃったり、「無駄にやっちゃう」ことが増える。レース中は必要最低限のことを行うようにしています。
ブノワ:素晴らしいです。いろんな人が「平常心でいる」ためにさまざまなことをしていると思いますが、結局興奮してしまうことが多いですよね。守澤選手は何か特別なことをしていますか?
守澤:特別なことはしていません。もともと落ち着いて走れるタイプなだけ、な気がします。あんまり「今日興奮してるな」って思ったこともないんです。
ブノワ:グランプリでも?
守澤:グランプリはむしろみんなを見て「うわ〜すごいな〜緊張してるなあ〜」って楽しんじゃうタイプです(笑)
ブノワ:守澤選手のお話を聞いていると、考え方が安定していますね。普段のトレーニングもそうですし、レースもそうですし。
他の人が「練習で出し切らなきゃ」「このレースに懸けなきゃ」となるとやっぱり興奮してしまうと思うのですが、そういうスタンスを取ってないからこそ冷静でいられるんだろうなと感じます。とてもエコに色々考えていることがうまく働いて、今のような結果になっているんでしょうね。
守澤:そうですね。あれこれやって上手くいったためしがないんです。自分が持ってる以上のものはどうせ出ないですし、あれこれやったら対応できない領域になってしまいます。自分の持っているもので勝負する、それを超えないようにしています。
ルールが変わったとしたら……
ブノワ:レースの時は頭の中でしっかり考えておくタイプですか?それとも感じたままに走るタイプですか?
守澤:頭の中でしっかり考えています。大体やりたいことは事前に決まっています。相手として走ったことのある選手が多いので、大体相手のこともわかっています。「こうだったらこう、こうなったら……」とシミュレーションして走ります。最後はフィーリングになる部分もあるのですが、何種類かプランを立てておきますね。
ブノワ:守澤選手はラインの恩恵を受けるタイプの選手かと思いますが、もしラインがなければどうですか?
守澤:もし1人ずつの勝負だったら……相当弱いですよね。本当に並の選手になってしまうと思います。僕は(新山)響平みたいなことはできないですし、もちろん響平も僕みたいなことはできないですけど……もし「1人ずつ走れ」となったら、スタイルを変える必要がありますね。
ブノワ:そうおっしゃいますけど、トップ9に入る実力のある選手ですから、個人戦になっても何か良いやり方を見つけそうですね。
守澤:(笑)そうですね、その環境の中で自分の勝てる方法を模索するしかないと思います。今はこのギア比なりルールなりの中で最適解を探っているので、何かルールが変わったら、またその中でのスタイルを作れると思います。探すしかないですね。
「人と違うこと」は必須
ブノワ:性格についてもう少し聞かせてください。日本は集団行動が美しいとされる場面が多いですが、守澤選手は走りが違う、考え方が違う、ポジションもなんか違う(笑)……といった方ですよね。上に行くために、他の人と異なるマインドセットを持つことは重要だと思いますか?
守澤:思います。もしまったく同じことをするのなら、才能のあるやつには勝てないじゃないですか。才能ですべてが決まってしまう。そういう人たちに勝つためには、その人たちがやっていないことをする必要があると思っています。人と違うことをするのは大事だと思います。もちろん常識の範囲内ですけどね(笑)
ブノワ:その通りですね、競輪に限らずすべてにおいてそうだと思います。グループ内で同じことをし続けたら何も変わらないですからね。