でも、直感も大事!
Q:その一方で、バイクのセッティングは奥さんに決めてもらった、という話も伺ってます(2021年KEIRINグランプリにて)。
そうですね(笑)KEIRINグランプリの前にセッティングを3種類くらいで迷っていたんです。それで妻に映像を見せて「いつのやつが良さそうか」って聞いて、「この時のが良いんじゃない」って決めてもらって。
競輪脳……その分野に入り込んでしまっているような状態になり過ぎると、他の人になら気付くことでも、自分では気付けないことって多いと思うんです。ある人は「このセッティングじゃないと、こうできひんからこうやねん」って理由があったりするかもしれませんが、自分としては、競輪をそんなに知らない人の”客観的な意見”も大事だと思っています。
グランプリが迫ってくると気持ちが繊細になっていきますし、データで比べようとしても、そのセッティングの3種類が拮抗してたりする。そうなった時はもう、素人に「こっちの方が軽やかな感じ」と客観的に見てもらうのが、最後の最後には良いのかなと思います。
Q:面白い考え方ですね。
そうかもしれないですね(笑)選手にアドバイスを求めたとしても、選手の感覚で答えられちゃいますからね。そういうことをしたのはグランプリの時だけでしたけど、レース後に「今回どうやった?」って聞いたりはしています。とはいえ競輪の話は、家ではまったくしないですね。
Q:休みの日などは、あまり外に出ないとも聞きますけど、家で何をされてるんですか?
寝てますね!ほんとに……疲れが……
データ的に見ても「遊びに行ってる場合じゃないな」ってくらい疲れていたりするんです。なのでしっかり休養に充てています。
Q:睡眠を分析する機材とか使っていたり?
やってます!これで大体わかるんで、体調管理してますね(スマートウォッチで睡眠時間などを管理)。
Q:すごく”データの男”になっていますが、ここまでやっているのであれば、最終的にコーチングとかできそうですね?
いやあ、無理ですねえ。パッと見て「どう?」って聞かれるくらいならアドバイスできると思うのですが、ずっと1人の人を見続けてると、自分が入っていってしまうので……そうなると見えるものが見えなくなってしまう、さっきの話でいうとこの「素人目線」じゃなくなってしまうと思います。その人に興味を持ち、その人の感覚がわかってきてしまうと、的確なアドバイスができなくなってしまうだろうなと。だからコーチをずっとしてる人は凄いなと思いますよ。
Q:練習内容って、選手間で秘密にしているものですか?
言いたくない部分もありますね。脇本(雄太)さんは、言ってしまうし、言っても大丈夫なタイプです。怪我する前は、それこそ脇本さんのトレーニングをそのまま取り入れていました。今はウェイトはあまりしないです。
「毎日が最高の古性優作」
Q:競輪選手って年間を通じてずーーーっとレースがあるのに、その中でトレーニングをして、またピークを作っていかなければいけません。その裏側がどうなってるのか、は気になるところです。
他のSSの選手がどうやってるのか、興味はありますね。ありますけど、特殊な世界なので……気持ち的に上げていく部分も多いですよね。体はもう、ついていけるかわからないので。
馬とかもそうらしいです。試合が近づいてくると体が引き締まってくる、本能でそれがわかっている、と聞いたことがあります。人もそれに近いのかなと思います。G1が迫ってくるとだんだん体が研ぎ澄まされていくというか、そういうところがあるように思います。
Q:競技だと「世界選手権が10月だから、7月あたりは調子が落ちてるけどそこから上げてこう」みたいなピーキングがありますけど、競輪は次から次へとレースが続きますから、調子は落とせませんよね。
ちょっとずつ右肩上がりにしたいな、と思っています。波はあると思うのですが、その波を小さくして、少しずつ右肩上がりになっているのが理想です。
Q:では「毎日が最高の古性優作」ということですね?
そうですね。もちろん疲れが溜まっているタイミングはあるのですが、気持ち的には昨日の自分を超えるイメージでやりたいと思っています。でもなかなか超えられないですね。力が入りすぎかもしれないです。本当に若い選手が強いので、置いていかれないように、とも思います。
インタビュー後編では先輩・村上義弘のレースと重なったKEIRINグランプリ2021の思い出など、いよいよ直近となるKEIRINグランプリ2022に肉薄するお話を伺っていく。
KEIRINグランプリ2022インタビュー
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