世界を見て、見えたもの
Q:今回、海外の選手となにかしゃべったりはしましたか?
しゃべることはしゃべりましたが、あんまりびっくりするような選手とはしゃべれませんでしたね。雑談をするよりは、練習を一緒にやってくれるとか、そういうことになったらすごくしゃべると思います。でもそういうことは、たいてい機密事項なので……(笑)
大会中に練習の様子などを見られたので、そのあたりはすごく良かったなと感じます。
Q:ではもし今後海外に武者修行に行くようなことになれば、練習も一緒にやることがあるだろうし、とても刺激になりそうですね。
それが一番、僕には刺激ですね。話で聞くより、目の前で見たり、映像として記憶する方が残りやすいので。
Q:目指したい選手像などは固まってきましたか?
今まで国内でやってきて、国内で自分がどのような立ち位置にいるのかは徐々にわかってきました。「毎日の練習を全力でやる」というだけで、目標が明確なわけでもなかったんです。「世界選手権に出たい」と思ったわけでもなかった。毎日の練習を一生懸命やっていたら、世界選手権に出してもらえることになりました。
毎日努力して努力して努力して、それを繰り返してきた結果、世界選手権に出たことで「どれだけの筋肉量を増やせば」「これだけの技術を身につければ」という、世界の中での目安が見えてきました。
マシュー・リチャードソンと自分の体格を比べてみても全然負けていると思うし、テクニック、バイクコントロールも負けているなと思います。彼はすごく参考にしやすい選手です。ラブレイセンみたいな「異次元」のパワーに挑むために、実際に見たこそわかる、というのを今回の世界選手権で感じました。
(目標に達する前に)自分さえ壊れなければ、「これだけやれば追いつく」が見えてきたように思います。目標がやっと定かになった感じです。
Q:ラブレイセンって……やっぱり衰えないですね。
そうですね、衰えてほしくない気持ちと、早く衰えて世代交代してくれって気持ちの両方があります。でもそこにしがみつくように練習していけば、いざ彼が衰えた時に自分が一番になれるかな、と思っています。「いつかは絶対勝ってやろう」の気持ちで毎日練習しています。
Q:打倒ラブレイセンですね。
打倒ラブレイセンです。
パリオリンピックまであと2年
Q:パリオリンピックが2024年。何もかもが初として挑んだ2022シーズンが終わりました。パリオリンピックに向けてどのような感情でいますか?
(競輪選手)養成所にいる頃から、ほとんど全ての人に「パリは無理だね」って言われてたんです。もちろん時間的に無理とか、難しいとかもわかってるんですが、諦めていない自分もいます。先輩たちとの差を見ながら、毎日「無理かな」「いけるかな」の繰り返し。でもだからって「その次」のオリンピックを目指してやっていくのも、自分には合ってないことだと思うんです。
だからパリだけを見て、パリに出ることだけを考えて、練習しています。誰に何と言われようと「自分が出てやる」って気持ちがずっとあります。
Q:2022年は競輪選手としてデビューし、ナショナルチーム入りし、世界選手権にも出場し……と、はたから見ても激動の1年だったように思います。この1年を振り返っていかがですか?
今年の最初に立てた目標が「我慢の年」だったんです。でも、その目標設定を間違えたなって思っていて。
1年通して、本当に我慢し続けてしまったんですよね。骨折から始まった1年で、体調を崩して練習できない期間も長かったし、流れに乗ることに精一杯の1年だったように思います。流れに乗れてきたなと思ったところで怪我、ってこともあったし。激動の1年で、耐えること、しがみつくことに精一杯の1年でした。
Q:良くも悪くも目標通りになってしまった。
そうです(笑)来年の目標は「挑戦すること」と、もう決めています。2023年につながる良い1年ではあったと思います。来年はしっかり攻めていきたいと思います!
体に気をつけて(切実)
Q:今後も期待しております。では最後に、フランスおもしろエピソードがあれば聞かせてください。
……あ、おもしろエピソードありました!
チームスプリントが終わって、みんなに慰められながら帰ってきて、自分としては「みんな慰めてくれるのはありがたいけど、スプリントもあるし切り替えて考えないようにしよう」って思ってたんです。
でも、しっかり左耳が聞こえなくなりました(笑)
Q:えぇ!?(これおもしろエピソードなのか???)
ずっと水が詰まってるみたいな感じで、聞こえなくなってたんですよね。ストレスによる突発性難聴があるらしいので、それなのかなと思います。気持ちとしてはなんとも思ってないはずなのに、体には出ちゃってました。それが一番おもしろかったです。
Q:(おもしろいんだ……)では体に気をつけて、次のシーズンに入れるように頑張ってください。
はい、ありがとうございます!