父、市田佳寿浩のこと

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1kmTTは「真っ白」

Q:これまでの大会成績では1kmTTでの優勝が多いですよね。得意なのがこの種目なんですか?

得意なのは……なんですかね(笑)?

1kmTTって完全な個人競技じゃないですか。全員が全力を出し切って、その上で1位が決まる、シンプルでかつ一番強い種目だなと思っています。それに1kmTTができれば他の種目もできるようになっていくし……。

そういうこともあって、高校1年の終わりから「卒業までこの種目一本で行く」という意気込みでした。気づいたらこれに全部を注いでいました。

Q:1kmTTをやり終わった時とてもしんどいと思いますが、あの苦しさを市田選手流で例えると、何になりますか?

「真っ白」ですね。気づいたら終わってて、気づいたら結果が出てて、気づいたら体が動かない、みたいな。

ゲームで負けたり瀕死になると「目の前が真っ白になった」みたいな表示が出ますけど、それに近いんじゃないかなと思います。手足に力が入らなくて、呼吸もままならなくて……全てを出し切って視界も薄くなって「ああ真っ白だ」みたいな。そんな感じです。

Q:痛みの印象よりも全部抜けた印象が強い?

そうですね、痛いを通り越して何も感じないです。でも30分後くらいに辛さがきて、1時間後くらいに吐きそうになっています。僕、ちょっと痛みが遅いんですよ。

終わった直後はアドレナリンが出ているのか「真っ白」で済むんですが、30分経ったら目が死にます。優勝できなかった時は本当に死んでますね。優勝できていたら多少元気です。

Q:優勝が多くて良かったですね(笑)

はい、なんとか(笑)

後ろをちぎって圧勝したケイリン

Q:インカレでは1kmTTで優勝しましたが、この時ケイリンでも優勝しています。2年生で優勝となると、周りから「おお〜」って感じの反応をされたのでしょうか?

いえ、あの時のケイリンはどちらかというと「そうだろうな」という反応が大きかったです。

1kmTTで名前を売っていたので、ケイリンをし始めたのが高3の国体だったんです。その時はジュニアで出場していましたが、上がりタイムがエリートとほとんど同じでした。ギア規制もある中でそんなタイムだったので「ケイリンさせたらヤバいやつ」という印象を持たれていたようです。

1kmTTの走りをケイリンにシフトチェンジさせたらヤバい、と大学自転車競技部で思われていて、いざやってみたら後ろをちぎって圧勝。そんなことを何度かやって、インカレでもそんな勝ち方をしました。

Q:これまでは1kmTTに専念してたわけですもんね。

はい、1kmTTにしか興味がなくて。ケイリンも「やってみろ」と言われた時は「どうだろう」と思いました。

Q:でもオリンピックを目指すとなると、1kmTTはオリンピック種目には入っていません。五輪採用種目ではどれに一番興味があるんでしょう?

個人的にはチームスプリントをやってみたいです。個人種目なら、まだまだ僕が言葉にするのも恐れ多いですが、ケイリンかなと思います。

Q:チームスプリントが好きというのは、どんな理由からですか?

タイム計測系の種目が好きなんです。でもそれを3人でやるとなると、それぞれの個性やチームワークも必要とされます。「3人で最速を決める」というのが、良いなあと思います。

性格はネガティブかも、そして”こだわり”系

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