史上初の1年延期で開催された東京2020オリンピック。自転車トラック競技は幸いにも真夏の炎天下の影響を受けずに無事開催。梶原悠未のオムニアム銀メダル獲得をはじめ、数多くのドラマが生まれた。
東京オリンピックの延期の影響もあり有力者の引退などが相次いだが、実際のレースではベテランの活躍と若手の台頭が顕著となった。性別および短距離と中長距離に分けて、その模様を見ていく。今回は短距離編。
変わらぬ顔ぶれの男子
およそ1年半前の世界選手権と、表彰台の顔ぶれにあまり変化がなかったのが男子短距離。だが、走りを見て変化を感じられたのはイギリスだ。
かつてのクリス・ホイからジェイソン・ケニー(リオオリンピック短距離3冠、今大会はケイリン優勝、チームスプリント銀メダル)へと系譜が受け継がれ、そしてそのバトンをジャック・カーリン(24歳:今大会チームスプリント銀メダル/スプリント銅メダル)が受け取ろうとしている。
今大会のジェイソン・ケニーは、前回大会までのような存在感は無く、世代交代を匂わせた。それでもケイリンで金メダルを獲得してしまうのは流石と言わざるを得ないが、スプリントで銅メダルを得たジャック・カーリンの方が明らかに勢いがあった。
ケニーの年齢を考えると今大会がオリンピックは最後になるだろう。そして今後の「常勝軍団イギリス」の短距離チームを率いる旗手となるのは、今大会で頭角を現したジャック・カーリンに違いない。
一方で相変わらずオランダのオレンジ軍団は、ハリー・ラブレイセン(24歳:今大会チームスプリント金、スプリント金、ケイリン銅)を中心に旋風をまき散らし、そしてアジズルハスニ・アワン(33歳:マレーシア)は巧みさが光る走りでキャリアハイの走りを見せた(ケイリンでは銀メダル、スプリントでは銅メダル)。
オランダはまだ若いチームであるものの、近年のトラック短距離では顔ぶれは変わっていない。アワンはマレーシアで唯一世界と戦える選手として孤軍奮闘はしたものの、チームとしての厚みは無かった。
男子種目は今後もオランダ、イギリスの2強となってしまうのか。ぜひとも日本にはこの間に割り込んでもらう存在となってもらいたい。