中日スポーツ・東京中日スポーツの八手亦記者による、寄稿記事をMore CADENCEに特別掲載。オリンピック トラック競技期間中、いつもと異なる視点から見る「自転車トラック競技」をお届けする。
初出場の小林優香がケイリン会心の走り
オリンピック初出場の小林優香(27)=日本競輪選手会=が会心の走りを見せてくれた。上位2人が5日の準々決勝に勝ち上がる予選(4組)で2位。体力の消耗が大きい敗者復活戦を回避しての初戦突破で、メダル獲得へ向けて最高の初戦となった。
「細かいミスはあったが次の日(準々決勝)に進むことが一番大事。それが達成できたのはよかった。私のホームバンクだから観客の声援を受けながら萎縮することなくゴールに向けて走れました」とゴール後は日の丸を振る観客に手を振り、控えめなガッツポーズも見せた。
スタートは内から2番目。「どのポジションからでも準備している」とは話したものの、2番手を確保できたのが大きかった。展開は先行したオレナ・スタリコワ(ウクライナ)の2番手を終始追走。小林の後位からまくりを狙ったシェーン・ブラスペニンクス(オランダ)の動きに巧みに合わせて、そのまま2番手でゴールに飛び込んだ。
「オリンピックはみんなが勝ちに来ている。強い人でも勝ち切れないところで勝ち上がれたのはよかった。全ては金メダルを取るために5年間やってきた。まだ終わってない。明日もしっかり一戦一戦を戦う」。
もろさがあったかつての小林の姿はもうない。そして、そんな小林についてヘッドコーチのブノワも「このレベルの大会では初めての予選突破。でも驚いてない。高い目標を持って臨んでいるからね」と、その成長ぶりを喜んだ。
脇本雄太はスプリント勝ち上がり、新田祐大は予選敗退
男子スプリントの2人は明暗を分けた。脇本雄太(32)=同=は、ハロン(200mFTT)勝負の予選で9秒518の日本新記録をたたき出して9位突破。1回戦はケビン・キンテロ(コロンビア)に勝ち、2回戦はケニー(英国)に敗れたものの、敗者復活戦でシュテファン・ボティシャー(ドイツ)に勝利して5日の3回戦に駒を進めた。
7日からのケイリンが大目標。しかし、スプリントでも抜群の先行力を披露し、万全の仕上がりをアピールした。2回戦は隙を突かれて相手に逃げ切りを許したが、敗者復活戦は積極的な仕掛け。反撃を許さなかった。
「日本新については練習で出せていたタイムを本番でも出せたというだけ。1回戦からはベストを尽くしたいという気持ちが出た結果です。敗者復活戦まで時間が短くて体がきつかったけど力を出し切れた。スプリントはメダルを意識せずに楽しめている」と話した。
残念だったのは新田祐大(35)=同。ハロン勝負の予選が9秒728の26位に終わり、1回戦に進めなかった。
本人はショックというより、伸びなかったタイムが意外だった様子。「走る前は予選通過ならできると思っていた。次のことを考えていたぐらい。9秒5は出ると思っていたし、最近はこんなことがなかったから自分でも驚いている」と首をかしげた。
原因は本番への準備。「会場に入ってからのウオーミングアップの仕方、モチベーションのピークへの持っていき方がうまくできなかった」と反省。
ブノワも「私の知っている新田ではなかったけど、ケイリンでは別の選手になれるから」と全く心配はしてない様子だった。
Text:八手亦和人
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