類似の多い2つの競技
More CADENCEでは過去に、自転車競技の二刀流や、他競技からの競技転向などをご紹介してきた。その中でも、スピードスケートから
トラック競技への転向者の多さには、目を見張るものがある。
自転車強豪国オランダからは、ロリーヌ・ファンリーセンやテオ・ボスの兄であるヤン・ボスが、スピードスケートと自転車で冬・夏のオリンピックに出場。日本でいえば、競輪と競技で活躍する松井宏祐や梅川風子はスピードスケート出身だ。
本記事では「なぜトラック競技にはスピードスケート出身者が多いのか」を掘り下げていこう。
使う筋肉が近い
自転車競技もスピードスケートも、下半身を主に使う競技。大腿部の筋肉発達が顕著だ。スピードスケートは500m(短距離)から10,000m(長距離)までの種目があり、自転車競技もロード選手と競輪選手では太ももの大きさに違いがあるように、スケート選手も短・中長距離で大腿四頭筋の厚さが異なる傾向にある。
自転車は大腿の前側でペダルを”踏む動作”と、もう片方の脚を”引く動作”の連続によって自転車を進める。スピードスケートも、片方の脚を交互に踏み込むことで前へと進む。どちらも前傾姿勢で、大腿と臀部の筋肉でペダル/地面を踏み込み、推進力へと変えている。
では運動生理学(運動によって身体に起こる反応や現象を理解する学問)の観点から見たとき、この2競技にはどのような違いがあるのだろう?
自転車競技とスピードスケート選手を比較したとある研究にて、両競技から各9人を対象に1500mのタイムトライアルを行い、スタート速度の違いによるペース配分と筋疲労(血中乳酸度)を調べた。
結果、走行時のペース配分は競技によって異なるが、自転車/スケートの運動が選手の筋肉や神経に与える影響は同等であると分かった。
つまりこの実験を基に考えると、両競技は運動生理学的な面でも類似点は多いということになる。
出典:International journal of sports physiology and performance
そのほか、オーバルコース(スケートは400m)で競われ、フォームや空気抵抗がタイムに影響されること、似た種目があること(パシュート種目)など、トラック競技との共通点は多い。