我々は特別に独占インタビューを慣行。今回の日本滞在を語ってもらった。

Q:2005年を最後に初のBack To JAPANですよね?

そうです!驚いたことに、学校、サイテル、トラックなどに行くことによって、昔の楽しかった記憶が甦ってきましたよ!戻ってくることが出来てとても嬉しいです。

Q:何か変わりましたか?

ドアかな(笑)あとはサイテルも少し(笑)でも私たち海外からの選手が来た時にお決まりのステッカーを貼る場所があって、そこに貼っていた自分のステッカーはまだありましたね

そのステッカーを見れたのは嬉しかったです(笑)将来のためにと思って付けておいたんだけど、まさかまだあるとは思いませんでした。

Q:ちょっとだけ昔と変わったけど、他はあまり?という感じでしょうか?

そうですね。根底に日本の文化として古い物や、そこに在る物を変えないということが大きいと思います。変わっていないことが多くて、ここに来ることで昔のことや自分のいた時代、そして今と全てを感じることが出来ますよね。それは素晴らしいと思います。

Q:海外の選手同士でも日本の話をしたりするのでしょうか?

もちろんです。我々海外からの選手で日本の競輪を走ったことがある人は、例え会ったことがない人同士でも“日本の競輪を走った、日本を経験した”という共通の経験があり仲良くできます。例えスプリンターとして大成功を収めても、「日本で走った」という経験が無ければ本当のスプリンターにはなれない、そう感じています。

Q:ということはトルーマン選手も日本で良い経験を積んでいますね?

トルーマンのように若い時に日本を経験することは、これからの彼の選手としてのキャリアに多大な良い影響を与えると思っています。私が日本に来た時は29歳の時でした。ナショナルチームで走っている時はコーチ、メカニック、マッサーなど全てが周りに居て、機材なども困ることがありませんでした。でも日本ではそうはいきません。全てを自分で行わなければならないですし、その術を日本で学ぶことが出来ます。

ジョセフ・トルーマン

Q:ホイさんは2005年、日本の競輪に来た後からケイリンのレジェンドになっていきました。やはり影響は大きかったですか?

それは間違いありませんね。私が日本から戻ったときは、1kmタイムトライアルがオリンピックの種目から外された時でした。自分の得意種目(オリンピックチャンピオン)である1kmタイムトライアルも無くなったので新たな種目に焦点を当てなければと考えていました。その時には“ケイリン”をたくさん走っていたわけではなかったのですが、日本で“競輪”に触発され、このエキサイティングで、速くて、何が起こるかわからない種目を本格的に始めることにしました。

2005年に日本で走り、帰国してから努力をし、2007年の世界選手権では金メダルを獲ることが出来ましたね。それまでタイムトライアルを得意としていた自分がケイリンで勝てるようになるなんて夢にも思っていませんでしたし、出来るとは実際思っていませんでした。ケイリンは戦術もたくさんありますし、戸惑いを感じることも多々ありました。いろいろありましたが、2005年に日本に来たことが自分にとって大きな転換期になったと思います。

Q:日本の競輪で学んだこと、この種目で戦う上で最も大事なことは何でしょうか?

タイミングです。シンプルで最も大事なことだと思います。スピード、パワー、その他のことなど周りの選手やコーチたちはいろいろ言いますが、レースを読んで、待つか、行くか、その判断を行い、適切なタイミングで全力を出すことがとても大事だと思います。でも、そのタイミングを掴むために柔軟な考えを持ち、正しい瞬間に動くことは難しいことです。あとはレースを支配して、誰かが動く前に自分が動くことです。それらを学んだのは日本の競輪でした。

Q:1kmタイムトライアルが得意だったということは、ケイリンではロングスプリントが得意だったということですよね?

そうです。ですから自分は他の選手たちの前に出て、風を受けながら走っていました。かなりタフな走り方ではありますが、誰かに押し出されることもないし、トラックの最も内側を最短の距離で走れるし、2007年の頃には先行を頻繁に行っていましたね。先行をすることによって年間30レース位は勝つことが出来ていました。その後は他の選手たちに戦術を読まれてなかなか上手くはいきませんでしたが、2007年が終わる頃までは先行一筋でした。

Q:日本に来て、トルーマン選手の取材と聞いていますが、どんなことをトルーマン選手とは話しましたか?

日本での生活についてですね。面白いのは私が居た頃の2005年とトルーマンがいる今で話が合う・・・というか、話す内容が変わらないのです(笑)世界はもの凄い速さで変わっていますよね?今、自分には子供が二人いるし、行く先々は昔の面影など残していないところがたくさんあります。でも日本の競輪だけはそのままです。それがとても嬉しかったです。

先日、私が最後に日本の競輪を走った場所、松戸競輪場にトルーマンの取材に行きました。一歩競輪場足を踏み入れるた瞬間にすべてがフラッシュバックして記憶が甦りましたよ。選手管理室、検車場、椅子、匂い、独特なローラー台などが私の記憶に戻ってきました。日本は本当にユニークな国ですよね。テクノロジーは世界最先端ですが、同時に古き良き文化も残しています。だからこの国は人々から愛される国なのだと思います。

競輪選手養成所でカミキリムシを捕獲するサー・クリス・ホイ

Q:トルーマン選手をどう見ていますか?将来的に成功しそうだとか、潜在能力が凄いとか?

彼は優れたトップスピードを持っています。ですからスプリントとケイリンでは彼は多くの可能性があると思います。ただ、彼が東京オリンピックに出れるか?という質問だとしたら、答えは難しいと思います。

オリンピックに出るにはチームスプリントのメンバーになるしか方法がありません。今彼はチームの3走目を走るようにトレーニングしていますが、3走目にはオリンピックで合計6つの金メダルを獲っているジェイソン・ケニーがいます。ですから彼にとっての状況は良いとは言えません。

ライアン・オーウェンズ / フィリップ・ヒンデス / ジェイソン・ケニー

彼ほどの実力があれば、世界中のたくさんのチームで走ることが可能だと思いますし、世界中から欲しいと言われる才能の持ち主です。でもイギリスのチームで東京オリンピックに出場するならば、ジェイソン・ケニーを上回らないといけません。もしトルーマンがケニーを上回ることが出来て、東京オリンピックに出場出来れば、彼の東京でのメダル獲得は確実となるでしょう。ただ、難しい壁ではあると思います。

トルーマンは若いし、まだまだ成長過程にあります。また、彼の素晴らしいところは若いのにもかかわらず精神的に落ち着いているところです。そしてその精神的な部分が大事だということも理解しています。若い選手にありがちなのが、自信を持ち過ぎ、自分を信じすぎ、上手く行かなかった時にメンタルをやられます。一方で自信がなくて集中出来ないこともあります。彼はその辺りのメンタル的なバランスが取れているように感じますね。ですから東京オリンピックで活躍の機会がなくても、次のパリでは凄い選手になっているはずです。ジェイソン・ケニーが居ることで東京オリンピックに出ることは出来ないかもしれません。でもケニーを上回るために努力が出来ますから、それは素晴らしいことだと思いますよ。

Q:現在のイギリスチームはまだ本来の力というか、リオの時ほどのパワーを感じません。まだ隠している段階でしょうか?

選手としては出るレースは全て勝ちに行きます。ですから何も隠したりしていません。ただ、特定の体のパートを鍛えていたり、何かのプロジェクトに取り掛かっていたりすると、本来の力が出せない時期もあります。そしてチームはオリンピックにピークを合わせてきます。ですから私が思うにイギリスチームはまだ調整段階ということでしょう。

ただ、周りのレベルが上がっていることも挙げられると思います。オランダチームはとても強いですよね?スプリントでは現在ラブレイセン、ホーフラントの2人がオランダ人。ケイリンではブフリが世界チャンピオンになりましたが、彼もオランダ人。チームスプリントに到っては今の3人に加えてロイ・ファンデンベルクが走って圧倒的なパフォーマンスで世界チャンピオンとなりました。

マティエス・ブフリ

何が言いたかったかというと、イギリスチームはリオの時ほど短距離種目で優位を保てていないということです。それでもメダル争いはすると思いますが・・・・・・

Q:競輪以外に日本を楽しんでいますか?

はい。私は刺身、寿司などが大好きですから、海鮮を食べることを楽しんでいます。
昔、初めて日本に来た時に新しい物を食べてみたいと伝えたら、選手たちがお皿に山盛りになった見たこともないグロテスクな魚をたくさん持ってきてくれたことがありました(笑)私がそれを食べるのを見て「おいっ!あいつ喰ってるぞ!」みたいな感じで皆が楽しんでいましたね(笑)そのような事も思い出してしまいます。

Q:競輪以外で日本らしさを感じた部分は?

新幹線で丁寧な方に会いました。私の前に座っていた女性が「このシートを倒しても良いですか?」と聞いてきたのです。世界中のどこにいてもそんな経験は出来ませんよね。自分のことしか考えない世界で生きている自分たちにとって、日本のように「自分が行うことが他人にどれほど影響を与えるのか」を考えているのは驚きですし、素晴らしいと思います。あとはたくさんの人が一つのことに没頭していることも日本らしいと感じます。私は祖父母から「何をやるのも構わないけれど、やるなら全てを掛けてやりなさい」と言われて育ってきました。そのマインドに近い物が日本には文化的にあるのかなと思います。

Q:日本の競輪で賭けました?

はい(笑)でも惜しくも負けました(泣)

Q:イギリスの方々にも日本の競輪は受け入れられると思いますか?

間違いなく受け入れられると思います。イギリスだけでなく、世界中のトラック好きな人たちはこの日本の状況というか、日本の競輪を知らないだけですからね。一度やり方を知れば本当に面白いし、カジノのギャンブルなどよりもっと深みのあるギャンブルです。それはお金だけでなく、スポーツの要素が強いことが理由だと思います。若い人たちにもその点を分かってもらいたいですね。私が日本の写真とか、動画などを見せると大体の人が驚き、楽しそうしてくれます。

Q:競輪の世界的な大使になっても良いですね(笑)

なれるなら頑張りますよ(笑)