The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan、2026年第1回トレーニングキャンプが7月1日~7月12日の間に伊豆市にある日本サイクルスポーツセンターで実施された。アジア各国からジュニア世代を集めて実施したおよそ2週間のキャンプはトラック競技が中心のトレーニング。しかしながら、その中にはトラック競技場が無い国の選手たちの姿もあった。今回トレーニングキャンプに初参加したオマーン、サウジアラビア、バーレーンのコーチや選手たちに取材を行った。

我々の国にはトラック競技場が無い

取材を行ったのはキャンプの最終日となった12日、伊豆ベロドロームで行われた記録会(チャレンジザ伊豆ベロドローム)でのこと。今回のトレーニングキャンプにはオマーン、サウジアラビア、バーレーンに加えて台湾、そして日本の各地から計27人の選手が参加した。

2002年から始まっているこのトレーニングキャンプでも初の参加となったオマーンからは3人、サウジアラビアから2人、バーレーンから2人と例年と異なる顔ぶれが集まった。なかなか英語が話せないというジュニア世代の選手たちではなく、取材に答えてくれたのは主にコーチたち。

どうして今回は日本に来たのかと問うと「UAEに1つ、そしてエジプトに1つ、我々の文化圏にはそれしかベロドロームが無いんです」と、3カ国のコーチが口を揃えてそう語る。

その中でやはり若手に経験を積ませたいと思い、日本からの招待が届いたため、今回のトレーニングキャンプに参加をすることにしたとのこと。そして驚いたことに、この3カ国の選手たちはベロドロームで走った経験は一切無いらしい。

The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan、2026年第1回トレーニングキャンプ

初体験!やばいぜこの傾斜!!の図

素晴らしい日本の環境

この3カ国のコーチがさらに口を揃えたのは環境の素晴らしさ。暑い夏でも空調が効いているベロドローム、山あり谷ありでロードに困らない伊豆の走行環境、整備されたジム、そして宿泊施設(サイテル)の近さなど、トレーニングを行うのに最適な環境にとても満足している様子だった。そしてスタッフがいつもニコニコしていたことが最高だとも言っていた。

The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan、2026年第1回トレーニングキャンプ

現場を仕切っていた日本サイクルスポーツセンターの沼部コーチ 格言を伝えるため、各国の言葉で表現している

The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan、2026年第1回トレーニングキャンプ

筋トレの施設も揃っているサイクルスポーツセンター

たった一つの改善点、それは……

ちなみに、1つだけ改善して欲しい点を聞くと……更に3人のコーチが口をそろえたのは「食事」。ハラル食の人たちにとって、日本での食事には気にしなければならないことが多く、サウジアラビアのコーチに至っては、「次があるならば是非日本に来たいのだが、食料を持ち込むか、自炊をしないと難しい」とのコメントもいただいた。

トラックバイクは国内に3台のみ

上記のような背景を抱える国にとっては、トラックバイクも珍しい物。バーレーンのコーチJassim Mohamed Husainさんに聞いたところ、バーレーン自転車競技連盟が所持しているトラックバイクは2台だけで、今回参加する選手のサイズに合うフレームが無かったらしく、急遽1台を発注。合計で連盟所持のトラックバイクが3台になったとのこと(ちょっと嬉しそうだったのが印象的)。

The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan、2026年第1回トレーニングキャンプ

コルナゴのNEWバイクは連盟にとって3台目のマシン。真ん中がコーチ、左右が選手たち

国内ではロード競技は人気が出てきているものの、トラック競技者数でいうと、おそらく10人に満たないとの寂しいコメントもあった。この辺りはそれぞれの国の環境、文化によって競技の人数に偏りが出ることが分かる。

国内選手権の有無を聞いたところ、当然ながらトラック競技の国内選手権は存在しないとのことだった。

サウジアラビアは2034年の未来を見据えて

サウジアラビアのSultan Asiriコーチは未来についての考えを語ってくれた。2034年にはアジア競技大会の開催が首都のリヤドで決まっているため、2027年には首都のリヤドにベロドロームが1つ建ち、その後、合計で国内に4つのベロドロームが作られる予定とのこと。2034年に活躍できるようにトラック競技にも力を入れていく考えを持っていた。しかしながらベロドロームが現状は無いため、競技者をどうやって確保するのかに、頭を悩ませていた。

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Sultan Asiriコーチ

みっちり2週間の成果

タイムトライアル結果
           
NAME age Country フライング200m 1km  
this time
(12th Jul.)
this time
(12th Jul.)
 
Mohammed Hasan Kadhem 17 バーレーン 11″743 1’10″282  
Hasan Aqeel Thamer 17 バーレーン 12″138 1’10″864  
Ahmed Al Kulaibi 16 オマーン 12″710 1’17″177  
Mohammed AL Wahibi 16 オマーン 12″617 実施せず  
Zulfiqar AL Shezawi 15 オマーン 13″799 1’18″800  
Tayeb Rayan Tayeb 16 サウジアラビア 13″305 1’18″427  
Alibrahim Hussain Ibrahim 16 サウジアラビア 11″901 1’13″893  
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追い込みすぎてリバース

とはいえ大変なんです(汗)

このキャンプの長として全体と取りまとめていた日本サイクルスポーツセンター事業部部長の野田尚宏さんに話を聞いた。

「新しい参加国は面白いですよね。でも面白いけれど超疲れます(笑)なんだろう……民族性の違いというか、日本流は無理ですね(笑) でも、自己満足ではあるのですが、トラック競技の初心者だった選手たちが1kmで1分10秒だったり、ここまでの10日間でよく乗れるようになったなという気持ちはあります。これが起爆剤じゃないですけれど、中東でもトラック競技が発展していくことが期待できるキャンプになったと思います。サウジアラビアもちょうどベロドロームを作ると言っているので、何かしらの貢献ができたのではないかと思います」。

さらに様々な国から合計27人の選手たちがおよそ2週間の交流を行うため、国際文化交流としての側面もあるだろう。

「後半にかけて少しずつ仲良くなってくるかなというところです。やはり言葉がみんな喋れない、通じないっていうのがあるんです。そんなこともあり、1 週間したらちょっと観光旅行に連れて行くんですけれど、そこから距離が縮まった感じはあります。自転車競技で強い選手たちと言っても、やはりまだ子供なので、きっかけがあれば距離はすぐに縮まります」

競技面での切磋琢磨はもちろんのこと、人と人とのふれあい、しかも文化の異なる人たちの交流の場となっていることもこのキャンプの魅力の1つだと認識できる。未来のトラックサイクリストたちを育てるこのトレーニングキャンプ。既に李慧詩(香港のオリンピックメダリスト)を卒業生として輩出しているが、10年後に主要国際大会でメダルを獲得する選手がこのキャンプから再び現れることに期待したい。

興味のある方はこちら!

そしてこのキャンプを開催している日本サイクルスポーツセンターは絶賛リクルートを行っている。タレント発掘やアスリート育成のみならず、自転車競技大会の受入や主催・運営業務など自転車の普及発展に関する業務は多岐にわたる。未来の自転車界を支えたいと思う方は是非、日本サイクルスポーツセンターの門を叩いていただきたい。

連絡先:一般財団法人日本サイクルスポーツセンター 事業部競技振興課 

電話:0558-79-0004

e-mail  cscshinkou@csc.or.jp

担当:野田さん

未来の自転車界を支えたいと思う方は是非、日本サイクルスポーツセンターの門を叩いていただきたい。

The UCI/WCC Regional Development Satellite, Shuzenji/Japan(RDS Shuzenji, Japan)とは

RDS Shuzenji, Japanは前身であるコンチネンタル・サイクリング・センター・修善寺(CCC修善寺)が、国際自転車競技連合(UCI)がスイスのエーグルに設立した「ワールド・サイクリング・センター(WCC)」を拠点とする構想の下、世界の5大陸にある8つのサテライトセンターの一つとして、日本オリンピック委員会、日本自転車振興会(現:JKA)、日本自転車競技連盟の協力により2002年4月、伊豆にある一般財団法人日本サイクルスポーツセンターに設置された。

UCIの提唱するWCC構想とは、エーグルの本部において自転車競技の発展、並びにオリンピック、世界選手権及びワールドカップで活躍できる競技者の育成を目指すものであり、2002年1月から第1期生を受け入れ、日本からも数名の選手がこれに参加を経験。サテライトセンターはその目的を各大陸にて展開するものであり、RDS Shuzenji, Japanはアジア地域を担当している。

アジア自転車競技連合(ACC)及びACCに加盟するアジア40以上の国及び地域の自転車競技連盟《NF》に働きかけ、アジア地域における自転車競技の普及、発展、更には、世界レベルのトップアスリートの育成を主眼としてトレーニングキャンプを年に数回実施。このトレーニングキャンプを経て世界で活躍した香港のLee Wai Sze選手は、2012年のロンドンオリンピック女子ケイリンで銅メダル、更には、2021年、伊豆ベロドロームで開催された2020東京オリンピックのスプリントで同じく銅メダルを獲得するなど、トレーニングキャンプの効果は着実に現れている。