自転車トラック競技のナショナルチーム(日本代表チーム)は、今まさに「黄金時代」を迎えている。しかし国内での認知度はというと
「トラック競技って、要は競輪でしょ?」
と思っている人も、いまだ少なくないのが現状だ。
この記事では「トラック競技の基本」を超・初心者向けにまとめている。「まずはここだけ知っておいて!」というポイントだけを集めているので、ぜひご一読いただきたい。
そもそも「トラック競技」ってなに?
伊豆ベロドローム
まず、トラック競技とは「屋内で行う自転車競技」ということを知っておこう。陸上競技でも競技場内で行う種目のことを「トラック競技種目」と呼ぶことがあるが、自転車競技も同じだ。
自転車のトラック競技が行われるのは「ベロドローム」と呼ばれる、すり鉢状の屋内競技場。カーブ部分の傾斜はとてもキツく設定されているため、「壁みたい!」と驚く人も少なくない。
2つ目に知っていただきたいのは「短距離・中長距離さまざまな種目がある」ということ。
陸上競技に100m走やマラソン、リレーなどがあるように、トラック競技にも距離やルールの異なるさまざまな種目があって、分野ごとに異なる選手が活躍している。
短距離選手は太ももが発達しており、ぱっと見が明らかにゴツい
中長距離の選手は、短距離選手に比べるとすらっとしたフォルムの人が多い(とはいえ一般人と比べると十分ゴツい)
そして「案外たくさんの人がやっている競技」であることも、押さえておきたいポイントだ。
2022インターハイ 北桑田高校チームパシュートメンバー
自転車トラック競技はオリンピック競技のひとつ。世界の舞台で争われると同時に、日本国内ではインターハイやインカレ、国スポ(旧:国体)などでも行われている。
競輪と何が違うの?
よく混同されるが「公営競技の競輪」と「スポーツのトラック競技」は、似て非なるものだ。
競輪
日本で生まれた自転車競技。競技場で行うことは共通しているが「9選手で6周*走り、1着を決める」という1つの種目しかない。
※厳密にいうと7〜9選手で、4〜6周走る(レースの規模、競輪場の周長によって変わる)
トラック競技
実は、日本の競輪をベースにした「ケイリン(KEIRIN)」という種目が存在している。だがそれは、たくさんある種目のうちの1つにすぎない。
短距離種目ではケイリンの他にも「スプリント」や「1kmTT」、中長距離種目には「オムニアム」「チームパシュート」など、10以上の種目が存在している。
「競輪選手」を兼任している選手も
日本代表選手の多くは「競輪選手」も兼任している。レースで賞金を稼ぎつつ、日の丸を背負って国際レースで戦っているのだ。
逆に言えば「日本の競輪で、世界で戦う選手を見られる」ということでもある。オリンピアンの走りを、お近くの競輪場で見ることもできるかも?
いま、日本代表がめちゃくちゃ強い!
「でも、日本って世界で通用するの?」……その答えは、YES。しかも「最強クラス」だ。自転車トラック競技を知っている側からすると「日本の選手って今めっちゃ強いのに、みんな知らないなんてもったいない!」と思うくらい、すごい。
ここからは「絶対にチェックしておくべきスター選手」を紹介しよう。
絶対女王:佐藤水菜
「サトミナ」の愛称で知られる佐藤水菜は「女子短距離で今、世界一強い選手」だ。
世界選手権で「ケイリン」を2連覇(2024・2025)している現・世界チャンピオン。同じく短距離種目である「スプリント」でも、2024年は銅、2025年は銀メダルを獲得している。
国内の競輪でも活躍しており、2025年は年間の大きなレースを全部優勝。
誇張ゼロの「世界最強」が、日本にいるのだ。これってめちゃめちゃすごくないですか?
衰え知らずの鉄人:窪木一茂
窪木一茂は中長距離種目の選手で、1989年生まれの36歳。このくらいの年齢になると競技の第一線を退く選手も珍しくはないのだが、この男は「年齢を重ねるごとに強くなっていく」から恐ろしい。
学生時代から30歳までロードレースやトラック中長距離種目など「長い距離」に主軸を置いていたが、2020年に競輪選手養成所に入り、「短距離走者の走り方」を身につけて一気に成績アップ。
2022・2023年世界選手権の「スクラッチ(トラックで行うロードレースのような種目)」で2年連続銀メダルを獲得したのち、2024年には同種目で世界一に。
進化はここで止まらず、2025年には4種目の総合成績で競う「オムニアム(4種目のうち1つがスクラッチ)」で36歳にして銀メダルを獲得した。
「次は何をしてくれるのか?どこまで行ってくれるのか?」と、非常に夢を見させてくれる選手だ。
男子短距離:中野と太田の熾烈なエース争い
左:中野慎詞/右:太田海也
男子短距離で近年「2大トップ」の様相を見せているのは、中野慎詞と太田海也。2人とも1999年生まれで、国際大会の表彰台の常連。成績も拮抗することが多いライバル同士だ。
2人とも2024年のパリオリンピックに出場したが、太田は判定に泣く形で、中野はアクシデントによる落車で、それぞれ悔しい思いをしている。2028年のロサンゼルスオリンピックには誰が出るのか、そしてどのようにして「雪辱」を果たすのか、そのストーリーにも注目したい2人だ。
その他にも、海外ロードレースで武者修行している選手や、窪木と同じように競輪選手養成所に入って短距離のパワーをつけようとしている中長距離メンバーなど、ご紹介したい選手はたくさんいるのだが……初心者にあまりたくさん伝えても頭がパンクしてしまうだろうから、この辺りにしておこう(詳しく知りたい方はMore CADENCEの記事をたくさん遡ってください!)。
