2025年12月10日、UCI(国際自転車競技連合)は『2028年ロサンゼルスオリンピック』における予選システムと出場枠を発表した。2024年パリオリンピックと変わらずロード、トラック、マウンテンバイク、BMXレーシング、BMXフリースタイルの5つの主要カテゴリーで、合計22個の金メダルが争われる。
本記事ではトラック競技の出場枠獲得方法について、「パリオリンピックからの変更点」の観点で詳しく紹介する。
Los Angeles 2028 Olympic Games: qualification systems and quotas for cycling events unveiled
出場の「大枠」はパリオリンピックと同様
ロサンゼルスオリンピックの自転車トラック競技では、短距離3種目、中長距離3種目の合計6種目が実施される。ここは、パリオリンピックと同様。
| 短距離種目 | スプリント、ケイリン チームスプリント |
| 中長距離種目 | オムニアム、マディソン チームパシュート |
そして出場枠の総数もパリオリンピックと変わらず、男女それぞれ95人。
| 男子 | 女子 | 合計 | |
| 総出場枠数 | 95 | 95 | 190 |
| 開催国枠 | – | – | – |
| ユニバーサリティ枠 | – | – | – |
ここだけを見ると前回大会を踏襲しているようだが、実は「大枠」は同じでも、その「内訳」に変更が生じている。
中長距離での変更:パリオリンピックからの変更点まとめ
内訳の変更は主に中長距離種目で行われている。パリオリンピックからの変更は以下の通り。
| 2024パリ | 2028ロサンゼルス | |
| チームパシュート | 10チーム | 8チーム |
| マディソン | 15ペア | 14ペア |
| オムニアム | 22人 | 19人 |
チームパシュートは、「UCIトラックオリンピックランキング」のチームパシュートランキング上位の10チームが出場できていたが、最大8チーム出場へと変更となる。
マディソンは「チームパシュートで出場枠を持っている国*はマディソンの出場枠も獲得できる」という仕様。パリオリンピックでは「チームパシュートで出場枠を持っていない国から5カ国が追加で出場できる」だったものが「6カ国が追加で出場できる」となった。
※NOC(ナショナルオリンピック委員会)を便宜上、各「国」と記載している。本記事では以降も「各NOC」を「各国」と記載するものとする。
オムニアムには最大19人が出場する。UCIオリンピックランキング・オムニアムでのトップ13カ国にまず出場権が与えられ、残りの6枠にはマディソンへの出場権を持つ国が権利を得る仕様。
ポイント:チームが組めない国にもチャンスが
レギュレーション変更を詳しく見ていく。
【マディソン】
| 変更前 | 変更後 |
| チームパシュートで枠を取った10チーム。加えてマディソンが強い5チームを追加(合計15枠) | チームパシュートで枠を取った8チーム。加えてマディソンが強い6チームを追加(合計14枠) |
チームパシュートの枠数が減ったことで、マディソンの出場枠決定ルールは上記のように変更された。4人を集めなければいけないチームパシュートは、選手人口が少ない国にとっては参加ハードルの高い種目。今回の発表では、より少人数(2人1チーム)で行えるマディソンの個別枠が広がったことで、少人数の国にもオリンピック参加チャンスが広がったと捉えることができる。
【オムニアム】
| 変更前 | 変更後 |
| マディソンで枠を取った15カ国に、オムニアムの強い7カ国を追加(最大22枠) | マディソンには出れないがオムニアムの強い13カ国に、マディソンで枠を取った6カ国を追加(最大19枠) |
オムニアムの最大出場人数は22→19と減少。しかしレギュレーションの面では、「マディソンには出ないがオムニアムの強い国」が大きく優遇されるように変更された。オムニアムのポイントランキング上位13カ国に加え、マディソンに出場する6カ国がオムニアムにもエントリーできる。
オムニアムにおいても、「チームメンバーを揃えられない国」に門戸が開いたような印象を受ける。
なおオムニアムには「マディソンに出場する6カ国(six NOCs qualified in the madison)」と記載がある。マディソンには最大14カ国に枠が与えられるため、そのうちの「6」がどのように選出されるかは、現時点では説明は無い。
短距離:個人種目ポイントランキング統合
短距離は出場枠数に変更はないが、スプリントとケイリンの枠獲得方法が微妙に変更されている。
チームスプリントの枠は前回と同様に8チーム。チームスプリントで出場枠を持った国は、個人種目(ケイリンとスプリント)にも2選手を送り込むことができる。ここまでは変更なし。
しかし「チームスプリントで枠が取れなかったが、個人種目に出場する」という時のレギュレーションが下記のように変更となっている。
| 変更前 | 変更後 |
| ・スプリントのランキングから7枠、ケイリンのランキングから7枠の合計14枠 ・スプリントで枠を取れば、ケイリンにも1選手をエントリーできる。ケイリンで上位であれば、スプリントにも1選手をエントリーできる。 |
「スプリントとケイリン」のランキングで14位以内であれば、両方の種目に1枠エントリーできる。 |
「The NOCs of the 14 highest -ranked athletes per gender in the UCI Track Olympic Qualification Ranking – Sprint and Keirin 」と表記されていることから、以前は「スプリントとケイリンそれぞれのランキング」だったものが「スプリントとケイリンの統合ランキング」に変更されたと理解する。
なお「チームスプリントに出場ができないが『スプリント&ケイリン』ランキングで14位以内という国は、追加される選手が他のトラック種目(オムニアムなど)または他の自転車競技(ロードレースなど)にエントリーしている場合、スプリントとケイリンそれぞれに別の選手をエントリーすることができる」という特例措置も用意されている。
1つの国から出場できる最大人数が「8」に
また、大きな変更点として挙げねばならないのは「1つの国から出場できる最大人数」が7から8に変更されたということだ。
パリオリンピックの際、日本の男子は「すべての種目」への出場権を獲得していた。すなわちチームパシュート、マディソン、オムニアム、チームスプリント、ケイリン、スプリントである。
チームパシュートにエントリーする4選手が、マディソンやオムニアムに。
チームスプリントにエントリーする3選手が、ケイリンやスプリントに。
……と綺麗に分かれれば中長距離と短距離の選手をそれぞれの得意分野で戦わせることができたのだが、日本は「チームスプリントメンバーではない選手に、ケイリン・スプリントが得意な選手がいる」という状況だった。つまり「オリンピックに出てほしい人数は8人なのに、実際は7人しか出られない」ため、どのような選択をするか苦悩を強いられた。
しかしロサンゼルスオリンピックでは最大数が「8」となったことで、仮にパリオリンピックと同じ状況になったとしても、全種目に最適な選手を配置できるようになった。
レギュレーション変更を踏まえた戦略に
ロサンゼルスオリンピックでは、出場枠の総数自体は変わらないものの、内訳においていくつかの変更が加えられている。特にチームパシュートの出場枠獲得が難しくなった一方、個人種目・ペア種目への優遇が行われていることで、出場枠を獲得するための各国の戦略も、前回とは異なるものとなっていくだろう。
ポイント加算大会など、出場枠獲得レギュレーションの全容は別の記事で紹介しているので、合わせてご確認いただきたい。
参照:
UCIリリース(ロサンゼルスオリンピックレギュレーション)
Los Angeles 2028 Olympic Games: qualification systems and quotas for cycling events unveiled
QUALIFICATION SYSTEM GAMES OF THE XXXIV OLYMPIAD – LA 28 Union Cycliste Internationale (UCI) CYCLING TRACK
パリオリンピックレギュレーション
Paris 2024 Olympic and Paralympic Games: qualification system for cycling events unveiled
Qualification system Paris 2024 Olympic Games – UCI Track(PDF)
Olympics.com(日本語)
