オリンピック出場直後に実施されたオールスター競輪では優勝を果たし、全日本選手権では中長距離種目にも挑戦と精力的に動き続ける佐藤水菜。

この世界選手権では新たなスタートを切る。

オリンピックでの経験がもたらした心境の変化を聞くうちに飛び出したのは「タディ・ポガチャルのような最強の存在になる」という目標。止まることなく走り続けるサトミナの言葉をお届けする。

“あの舞台”では最高のパフォーマンス以外は結果に繋がらない

Q:オリンピックから約2か月。振り返ってみて、いかがでしたか?

いつも通りの大会という感覚ではありましたし、変な緊張もありませんでした。でも最終的にはいろいろなことがうまく噛み合わず、それが結果に表われてしまったのかなと思います。バンクも、あまりにも速かったですね。

Q:200mFTTではアジア記録を更新。一時的ではありましたが、オリンピックレコードも更新する10秒257という記録でした。

走っている最中、残り半周時点の観客の反応で自分のタイムの順位がわかるのですが、今回は反応があまり良くなかったんです。「トップタイムじゃないのか」と思いながら残り半周を走ったのですが、掲示板を見たら1位でしたね(笑)。

最初に走ったシェーン・フルトン(ニュージーランド)が10秒281という記録を出したのを見て、この大会は高速になるな、と思いました。それがボーダーになる以上、10秒2は絶対に出さなくてはならないタイムだと思っていましたし、出せるタイムだとも感じていました。正直に言えば、ワールドレコードを塗り替えたかったですね。

すごく良いパフォーマンスを出せた日もあったし、悪いパフォーマンスになってしまった日もあった。自分自身の準備や周りの環境も含めて、最高の状態で自分が納得するパフォーマンスを出すことができなければ、あの場所では結果につながらないということを痛感しました。

過去一番キツかったエリミネーション

Q:その後の全日本選手権では、中長距離種目に出場しました。気持ちのリフレッシュにもつながりましたか?

リフレッシュというよりは、悔しくて、もう1回やりたいという気持ちになってしまいましたね(笑)。オリンピックが終わって、約2週間オフを挟んだあと、少しだけ練習期間を設けての出場だったので……もちろんみんな同じ条件ではありますが、専門外の種目ゆえ、トレーニングをしっかりと積んでいきたかった、という思いはあります。

Q:特に初日のエリミネーションでは、相当苦しそうな顔でバンクを降りてくる姿が印象的でした。

過去一で脚が痛かったです(笑)。今年のネーションズカップ第1戦(アデレード)のスプリント決勝で3本走ったのが最高に苦しい経験でしたが、それを優に超えてきました。気がついたら脚がパンパンで、バックも踏めないという状態に陥ってしまって。優勝して良いサプライズを大会に提供したかったのですが、2位とはいえ苦しむ姿を見せるというネタを披露することになってしまいました。

Q:他の中長距離種目も……

スクラッチは本当に悔やまれますね。
3kmパシュートに関しては4周(1km)までしか練習できていなくて、そこから先は未知の世界でしたね。

初心に戻ってチャレンジ

Q:いろいろな悔しい経験を経ての世界選手権。アルカンシェルを狙うのが今回のゴールでしょうか?

もちろんアルカンシェルを着ることができたら良いとは思いますが、自分のやりたいこと、やれることを見直していきたいと思っています。例えばオリンピックのケイリンではすごくハイスピードのレースになって後手後手に回されるレースもありました。だから初心に戻って、自分から動かしていくレースをするのもいいかもしれない。そういうことにもチャレンジする大会にしたいですね。

Q:特にオリンピックに出た選手は、みんなが新たなチャレンジをする舞台なのかもしれませんね。

そういう意味では、普段の大会よりもチャンスがあるのかもしれません。ただ、追いかける私の立場からしたら、なにかにチャレンジしなくてはいつまでも差を埋めることはできないですからね。

ポガチャルになる!

実は最近ロードレースをよく観ていまして……『ロードレース世界選手権』でのタディ・ポガチャルの圧倒的な強さを見て「ああなりたい!」と思いました。もしかしたら、特定の選手のようになりたいと具体的に思ったのは初めての経験かもしないです。レースを楽しんでいて、他の国の選手を引っ張ってあげるような余裕を見せつつ、正真正銘の強さを見せつける。すごいカッコ良いなと思って。

Q:では今後の目標はポガチャル?

ウェイト中も、「ポガチャルになる!」って頑張っています!ポガチャル仕様のフレームも欲しいくらいです。

どんなものを食べているのかとかも気になって、冷蔵庫の中身が公開されている動画も見たら、オーツミルクが常備されていたんですよ。私はオーツミルクが苦手なのですが、ポガチャルになれるなら挑戦しようかなと思っています(笑)。もちろん、スタッフの方と相談しながらではありますが。ポガチャルのような圧倒的な強さを今後身につけたいと思っています。