パリオリンピック自転車トラック競技の全日程が終了した。日本チームの結果を、ブノワ・べトゥ テクニカルディレクターが総括する。
コーチ陣に対して誇りたい
Q:大会を終えて、全体の総括をお願いします。
すべての種目は求めていたレベルを達成できていたし、競走力がありました。
しかし、審判員がとても悪かったです。オリンピックでこのような理不尽は許されません。日本チームはとても不利な状況にさせられました。今後はこれを乗り越えるような、文句のつけようのない綺麗なレースを見せる必要があります。
コーチ陣の仕事内容に誇りたいです。日本のレベルの底上げをしてくれました。一部の国はレベルが下がっていることが見て取れましたが、我々はトップと戦えるところまで来ています。コーチ陣のことは本当に信頼しています。
もちろん帰国してからしっかりと振り返りを行います。小さな失敗はありましたが、そこがメダル獲得ができなかった決定的な理由ではありません。我々がやってきた仕事は誇りが持てるものですし、ここで見せることができた「強い日本」のイメージにも誇りを持っています。オリンピックという舞台でここまで各種目にインパクトを与えられたということは初めてでしょう。これからの4年間で、トップに入るためのことをしていかなければなりません。
理不尽な判定
Q:特に不服だった判定は、どのあたりでしょうか。
最初のチームスプリントから理不尽がありました。フランスチームがフライングしたのにしていないということになり、判定が正しければフランスが失格のはずでした。
太田海也もミスを犯しましたが、初めてのオリンピックですから、難しい部分もあったでしょう。海也は自分の気持ちのコントロールを身につけなければなりません。彼にはオリンピックチャンピオンになるだけの実力が十分にありました。今回は良い勉強になったと思います。
Q:日本チームに足りなかったものは?
レースの経験、そして成功という経験です。
そして繰り返しますが、審判が本当に理不尽でした。フランスや他国のコーチ、そしてUCI に報告書を提出するつもりです。もちろん結果は変わりませんが、今後理不尽な審判員を起用することなく、平等な判断をする審判員を起用してもらうためのものです。オリンピックでこのようなことは本当に受け入れられません。
理不尽な判定がなければ、チームスプリントは4位にはいけたと思います。スプリントとケイリンでも、メダルに手が届いた可能性があるでしょう。ただ確かに日本側のミスもあったので、審判側が何も言えないような、綺麗な走りをしなければなりません。
(中野)慎詞は鎖骨骨折もしてしまい、そしてメダルを逃し、とても落ち込んでいます。フィニッシュラインの50m前までは本当にメダルまであと少しでした。気持ちが立ち直るまで時間がかかるかもしれませんが、「本当に手に入れるところだったんだ」と実感すればまた強くなれると思いますし、勝利を目指して走れると思います。彼は帰国後に手術を予定しています。
窪木と今村はやれると信じていた
Q:男子マディソン、そしてオムニアムで窪木一茂選手が大いに活躍しました。
「ああ、悔しい!」
窪木と今村(駿介)はやれると本当に信じていました。中長距離はスタートラインがだいぶ下で、中長距離を育成する仕組みが日本の中でうまくできていない背景がありました。だからここまでの仕事は本当に素晴らしいものでしたし、全員が「メダルに手が届く!」と思って見ていました。もちろんがっかりしていますが、その一方で今回は歴史上最も速いスピードレースでもありました。その中でこの結果は大きなモチベーションになります。
新しい日本の道を開いたと思います。短距離種目ではすでにポテンシャルを証明できていましたが、今回は「中長距離もできるんだ!」と思わせるものでした。日本には眠っている才能を持っている人がたくさんいるはずで、その子たちを育てる仕組みがないとトップにはなれません。今回の結果で新たな新人が来てくれるかもしれません。
また(橋本)英也には直前にリザーブに回ってもらうことになりました。彼はその決断を受け入れ、チームを応援してくれました。感謝の気持ちを伝えたいと思います。彼もこのチームに貢献した1人です。
「そのまま頑張り続けて欲しい」
Q:選手たちにはどのように声をかけましたか?
選手全体に対しては、「君たちは強く、トップになれる実力はあるのだから、そのまま頑張り続けて欲しい」と伝えました。このまま続けて、そして多くの応援をいただければ、メダルを獲得することは可能だと思っています。
Q:ブノワTD自身は今後どのように活動するのでしょうか?
まずは家族と休みます。その後考えます。
私は日本が大好きで、家族も日本での生活を楽しんでいます。でもとにかく少し休まなければなりませんね。