もしも池田瑞紀が解説をしたら

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中石「あ〜マジか……」

2024アジア選手権で1kmTTにエントリーした中石湊

Q:今、中石湊選手が1kmTTの発走待ちです。あと4人。中石選手の今の心境を代弁すると、どうでしょうか?

「あ〜……マジか……ほんとに走るんか……」

Q:そしてリカバリータイム(次ラウンドまでの時間)は約30分です。

30分?ほんとですか?ありえない……1kmとか500mとかって予選と決勝があって、どういう風に走ってるんだろうと思います。

Q:でも、予選から出し切らないと。勝ち上がれないかもしれないですよね?

確かに。しかも(4km個人パシュートなどと違って)長くないからちょっとゆっくり、ってこともできないですよね。

!!

……あ〜っそっか〜!!!うわあ、自分たちと概念が違いすぎてわかんない……

Q:走ってる時に応援は聞こえますか?

聞こえます。でも「わー!!!」ってなってることしかわからないことが多いです。ただチームパシュートの時はめっちゃ聞こえました。「いけー!」とか。応援してもらえるのは嬉しいです。

Q:チームパシュートなどでは走っている時にコーチが声をかけますが、あれは認識できますか?

はい、誰の声か判別できます。私は今回ブノワ(・べトゥ)さんと今村(駿介)先輩の声が聞こえました。「イケェ!!!」みたいな。

Q:なぜ彼らはこんな辛い1kmTT種目を続けられるんでしょうか?

それが楽しいからじゃないですか。「出し切った」感じが。

Q:池田選手も?

私の場合は脚が”爆発”する時としない時がありますけれど、1kmTTの人たちは100%”爆発”するじゃないですか!

Q:でもそれはチームパシュートにも共通する話なのかなと思いますが。

そうですけど、でもみんながいるじゃないですか。だから頑張ろうって思えます。

中石、スタートに立つ

「また1kmかよ……」

Q:あ、そんな話をしていたら、もう中石選手がバンクに上がっていますね。今の心境はどうでしょう?

「オッス!!!!」って感じだと思います!やりたくないとは思うけれど、でもやんなきゃいけない。だから「オッシやるぞ!」とはなっていると思います。でも心の奥の方で「また1kmかよ……」って思っていると思います。

Q:「また」(笑)

中石くんめちゃんこ1kmやってるし……あ、でも「楽しみ」って言ってた気がします。朝に「楽しみ?」って聞いたら「あ、いや、まあ……」って。

あ、それって楽しみじゃないってことか……(笑)

「それって楽しみじゃないってことか……」

Q:そういえば中石選手とは同級生になるんですか?

そうです。いつものふわふわ感じゃなくて、レース前はしっかりして見えますね。ギラギラ、集中しています。

Q:アジア選手権の1kmTTでは1分1秒が優勝ラインかなと思われるところですが……「アジアのチャンピオン」は、池田選手にとってどのようなものですか?

自分のチームパシュートで言えば「絶対勝たないといけない」というプレッシャーがありました。大陸選手権という事実に加えて、前回のネーションズカップ(2024シーズンの第1戦)では中国に負けちゃっていましたから。でも自分たちがどれだけタイムを出せるのかわからなかったから、めっちゃ緊張していました。

Q:中石選手のひとつ前の組のレースが始まりました。

うおー!やばいですね。(走っている選手から)見えない炎が見えます。やばいですマジで。(残り2周に入って)ここからは気合がヤバいです。

Q:ドリアンを食べるのと1kmTT、どちらが勇気が要りますか?

もちろん1kmTTですよ〜!絶対そう、ドリアンと比べちゃいけない。

……でもドリアンもやっぱり嫌です。

▶︎ドリアンの話はこちら

いざ戦場へ

Q:さて、いよいよ中石選手のターンです。発走機につきました。

うわー。もう「やるぞやるぞ」だと思います。でも緊張してる。心臓バクバク。タイムへの緊張というよりは、最初のスタートを「ボン!」といけるかと、あとは我慢勝負ができるかということへの緊張。「自分に負けないか」ですよね。きつい!ってなった時に諦めちゃわないこと、そこがマジ大事だと思います。

オレはやるぜ やるぜ やるぜ

Q:スタート前に背中をジェイソンコーチに叩かれています。あれは気合が入りますか?

そりゃあもう、無言で叩かれますからね。「行ってこい……」みたいな。

Q:戦士を送り出す……さあ、スタートのカウントダウンが始まりました。

緊張しますよ〜……どんどん秒数が減っていくのが……いや普通のことなんですけど……

(スタートの動きを見て)うわ!めっちゃいいです!!

Q:良いスタートを切って、もうあとは行くだけですね。

行くだけです!

Q:さあ、一番きついという残り2周です。

この周回が一番きついです!うわーきついよきついよ!

Q:ここまで一番時計です。残り1周、もうあとは行くしかない!

行くしかない、行くしかないです。

あーやばいやばいがんばれがんばれここがやばい、ここが一番きつい、あーいけいけいけ(早口)

Q:1分2秒101、暫定1位でフィニッシュです!

あー、こっちまで呼吸がやばい!

Q:このあとラストの走者が走ってランキングが決まりますが、走り終わった中石選手のところへ行ってみましょう。……今ゆっくりペダルを漕いでいますが、この時ってもう痛みが出ていますか?

痛み爆発です。こう(ハンドル投げ)!して終わった瞬間にボカンです。とりあえず早く止まりたいって感情ですね。

終わった瞬間にボカン

Q:あ、倒れています!

あーやばいやばい、ありえないです。うわガチでやばそう(笑)

見てるこっちがやばいです、怖いよ大丈夫か、すごすぎる。

Q:色々お世話されてますね。

やってもらわないと脚が動かないと思います。

Q:やってみたいですか?

いや……練習なら……

やばいもうありえない。やばいですねあれは。

「やばいですねあれは」

Q:この苦しみ、この苦痛。トラック競技の醍醐味ですね。こんなにスポーツって追い込むものなんでしょうか?

はい、追い込むもの!……えー、なのかな。それが味なのかもしれないです。

Q:追い込むの好きですよね?

ええ〜!???嫌いではないです。

言葉にするのが難しすぎる

Q:では、ここまでの解説ありがとうございました。

きつそうすぎる、言葉にするのが難しすぎる、でした。

「うえ〜!!!」ってなってることを言葉にしなきゃいけないから、解説の人って本当にすごいですね。

Q:また第2弾やりましょうね。

(笑)

自転車そんなに知らない人は、やっぱり結果しかわからない

Q:ところで今回(2024年2月)のアジア選手権、全体としてどうでしたか?

チームパシュートでちゃんと出し切れたのがまず嬉しかったです。でも個人種目(スクラッチ)が、やっぱり1番が欲しいけど、3番だったからすごく悔しかったです。しかもみんな勝っているのに自分だけ……ってとこもあって。

▶︎スクラッチ(銅メダル)のレースレポートはこちら

Q:でも日本チーム全体を見ても凄く見どころのある、ベストレースの1つだったと思います。

え〜そんなあ。でもそこで勝てる選手になりたいです。自転車そんなに知らない人は、やっぱり結果しかわからない。だからやっぱ悔しいですよね!なおさらっ!

池田解説員はレース中に再三のアタックを仕掛けていた

でも内容としては、こういう時に攻めとかないと、ヨーロッパの選手の相手にならないし。脚をいっぱい使ってそれでも勝てるレースがしたいです。

Q:オリンピックに向けてメインで力を入れるのはやはりチーム種目になりますが、将来的には個人種目にも力を入れていきたいですよね。

今はまだ……私はあんまりいろんなことを考えられないので、とりあえず今は「TP(チームパシュート)!TP!TP!」って感じです。

Q:ところで大学の方は問題なく過ごせていますか?単位とか。

はい、良い感じです。

やっぱ嘘!

いや嘘です。良い感じではないです!今は春休みだから、課題で気づいたら夜中12時とか、「やばいあと○秒で提出期限!!」とかがないので、トレーニングに集中できてて最高です!

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