パリオリンピック直前の世界選手権、『2023世界選手権トラック』が8月に終了した。これでパリオリンピックに出場できる枠は全て確定……というほどわかりやすくないのが、自転車トラック競技である。
この記事では「パリオリンピックまで、残る大会は何か」「どの大会がどれくらいパリオリンピックに影響するのか」をお伝えする。戦いはまだ終わっていない。
パリオリンピックまでのロードマップ
まず、パリオリンピックまでのスケジュールをご覧いただこう。
2022年7月9日〜2024年4月14日 | 出場枠選考期間 |
2024年4月15日 | 最終版「UCIトラックオリンピックランキング 2022-2024」決定 |
2024年4月22日 | UCIから各国への通知 |
2024年5月6日 | 各国の出場枠承認締め切り |
2024年5月13日 | 出場枠再分配用期間 |
2024年7月8日 | 「2024パリオリンピック」エントリー締め切り |
2024年7月26日〜8月11日 | 「2024パリオリンピック」開催期間 |
参照:UCIリリース(2022/7/4)
「Paris 2024 Olympic and Paralympic Games: qualification system for cycling events unveiled」
「Qualification system Paris 2024 Olympic Games – UCI Track(PDF)」
Olympics.com(日本語)
上記の表を見ていただくとわかるように、「2024年4月14日」までは出場枠選考期間。この期間の大会結果によって、各国の出場枠配分は変動しうる。
では、どの大会の結果で出場枠が決定していくのかというと……
大会の種類と係数
対象となる大会は「ネーションズカップ」「世界選手権」「大陸選手権」の3種類。さらに各大会に「選考の対象となる順位」や「大会のレベルによる係数」などが加わり、複雑なものとなっている。
対象となる大会と成績 | 係数 |
パリオリンピック開催直近の『大陸選手権』2大会 でのベスト順位 |
0.75倍 |
『2023UCIトラックネーションズカップ 』 でのベスト順位2つ + 『2024UCIトラックネーションズカップ 』 でのベスト順位2つ |
1倍 (そのまま) |
『2023世界選手権トラック(エリート)』 でのベスト順位 |
1.5倍 |
このままでは少々わかりにくいため、日本を例としてひとつずつ見ていこう。
①パリオリンピック開催直近の『大陸選手権』2大会でのベスト順位
日本の場合、大陸選手権とは「アジア選手権」にあたる。パリオリンピック直前のアジア選手権は2023と2024。2023はすでに開催されているが、2024はこれから開催されるため、これからの頑張りが重要だ。
大陸選手権は「ベスト順位を加算」となっており、日本チームから誰でも良いから1位を獲ればその成績が日本のポイントとして加算されることとなる。ただし大陸選手権は係数が0.75倍……つまりちょっと低めに算出されるので注意。
【大陸選手権の個人種目で獲得できるポイント】
獲得ポイント | ×0.75 | |
1位 | 600 | 450 |
2位 | 540 | 405 |
3位 | 480 | 360 |
例えば男子ケイリンで日本選手が1位、2位、3位と表彰台を独占した場合、1位の成績(450ポイント)が日本チームの成績として加算される。
②『2023UCIトラックネーションズカップ 』でのベスト順位2つ
+『2024UCIトラックネーションズカップ 』でのベスト順位2つ
ネーションズカップ2023は実施済みで、2024はこれから開催。
ネーションズカップは年に3回開催され、各年の「ベスト順位2つを加算」となっている。
【ネーションズカップの個人種目で獲得できるポイント】
獲得ポイント | ×1 | |
1位 | 800 | 800 |
2位 | 720 | 720 |
3位 | 640 | 640 |
例えば男子ケイリンにおいて、日本チームから出た選手の最高順位が「第1戦で6位、第2戦で3位、第3戦で2位」だった場合、ベスト順位2つなので3位と2位のポイント(800+720=1520)を日本チームのポイントとして加算することができる。
余談だが、ネーションズカップはナショナルチームだけでなく、チームブリヂストンサイクリングやチーム楽天Kドリームスといった「UCIトラックチーム」としての出場も認められている。UCIトラックチームから出場した選手の成績も日本チームとして加算できるため、「出場する選手の頭数を増やす=オリンピック出場の可能性を高める」ことができる。
③『2023世界選手権トラック(エリート)』でのベスト順位
2023世界選手権トラックはすでに開催済み。世界選手権は係数が1.5倍となっており、ここで成績を残すことがオリンピックに向けての鍵であった。
【世界選手権の個人種目で獲得できるポイント】
獲得ポイント | ×1.5 | |
1位 | 1000 | 1500 |
2位 | 900 | 1350 |
3位 | 800 | 1200 |
男子ケイリンの例でいうと、日本の中野慎詞が銅メダルの獲得に成功。これによって日本チームに1200ポイントが加算され、世界選手権後のオリンピックランキングは男子ケイリンは3位となった。
残る大会はあと4つ
出場枠選考期間は2024年4月14日まで。選考期間内に開催される日本チームが出場できる大会は、あと4つ残っている。
大会種別 | 開催地 | 日程 | |
ネーションズカップ | 第1戦 | アデレード(オーストラリア) | 2月2日〜4日 |
アジア選手権 | ニューデリー(インド) | 2月21日〜25日 | |
ネーションズカップ | 第2戦 | 香港 | 3月15日〜3月17日 |
ネーションズカップ | 第3戦 | ミルトン(カナダ) | 4月12日〜14日 |
特に女子チームスプリント、女子チームパシュートはオリンピック出場枠を獲得できるかどうか微妙なラインにあり、残る大会が枠を獲得するラストチャンスとなる。またすでに枠獲得が硬い種目においても、「国際レースの経験を積む」という意味で、本番のために残り少ない大会が重要となる。
オリンピックに向け高まる緊張感の中で、ともに日本チームを応援していただきたい。
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