『UCIトラックネーションズカップ第1戦(ジャカルタ)』で、初出場にして初の銀メダル獲得を果たし、世界の注目を浴びた太田海也(チーム楽天Kドリームス所属)。太田のレースについては既に詳細をレポートで報じてはいるが、数字で見てみると改めて凄いことを成し遂げたのだと再認識させてくれる。
この記事では太田海也がどれだけ「ヤバい」のか、数字と事実で掘り下げていく。
POINT①:世界王者のハリー・ラブレイセンは「8本」、太田は「9本」
ネーションズカップのスプリントは予選から決勝までを1日で戦う種目(世界選手権は2日間にまたがっている)。予選のトップ4は1回戦を免除され、2回戦からの戦いとなる。
今回、世界王者のハリー・ラブレイセン(オランダ)は予選をトップで通過し、2回戦へのシードを得た。
一方の太田は予選6位と上位ではあるものの、1回戦から走ることに。
比較対象としたラブレイセンと太田の両者は、全てのレースにてストレート勝ち(2本連続先取)を達成し決勝へ進出したものの、出走本数が少ないことは体力・脚力のアドバンテージに繋がる。
そんな状況でもラブレイセンとの互角の戦いを繰り広げた太田。この事実は太田の身体能力が、世界トップに近いことを示している。
それに加え予選を上位で通過すると、1回戦目以降のレースで下位の選手との組合わせとなるため、スプリントでは上位の選手ほど勝ち上がりが楽になるような仕組みとなっている。
そのため太田の場合、準々決勝にて予選タイムが格上のジェフリー・ホーフラント(オランダ:予選3位)と戦って”ジャイアントキリング”を果たしたわけだが、対するラブレイセンは予選では格下のマシュー・リチャードソン(オーストラリア:予選9位)との準々決勝となり、余裕をもっての戦いが可能となっていた。
例えラブレイセンと同じレース本数だったとしても、勝ち上がりを懸けた相手が同レベルばかりの太田と、格下を常に相手にするラブレイセンでは消耗具合も大きく異なる。そうした立場で決勝まで進出できたこと自体が、太田の「ヤバさ」を示していた。
POINT②:唯一の毎レース9秒台
ラブレイセンと太田が決勝までに走った各レースの「上がりタイム(フィニッシュまでの最終200mのタイム)」を見比べてみよう。
ハリー・ラブレイセン | 太田海也 | |
予選 | 9.385 | 9.612 |
1回戦 | シード | 9.979 |
2回戦 | 10.084 | 9.844 |
準々決勝1本目 | 9.889 | 9.762 |
準々決勝2本目 | 10.01 | 9.804 |
準決勝1本目 | 10.098 | 9.864 |
準決勝2本目 | 10.109 | 9.895 |
TISSOTの公式結果を見てみると、1回戦から準決勝まで全てのレースで9秒台の上がりタイムで走っているのは太田海也のみ。良い意味では体力お化け、悪い意味では効率の悪さとも見てとれるかもしれないが、大事な事実は「決勝まで全てのレースを9秒台で走れる」ということ。
準々決勝ではホーフラントが2本目を諦め、準決勝でもミカイル・ヤコフレフ(イスラエル)が2本目を諦めるなど、世界の強豪の心を折るレースを慣行する能力がある。疲れ知らずのこの走りは太田の「ヤバさ」を象徴している。