第11ステージ:ゲラント・トーマスがマイヨ・ジョーヌを獲得

アルプス3連戦の2日目は短距離山岳ステージ。全長108.5kmの中に、超級山岳が2つ、2級・1級山岳が1つずつ含まれ、常に登りや下りが続く過酷なステージとなった。

この日、昨年ステージ5勝を記録したマルセル・キッテル(ドイツ/カチューシャ・アルペシン)や、ツール・ド・フランス累計30勝のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス/ディメンションデータ)など、強力スプリンターたちがタイムアウトにより大会を去った。

だがこのリタイアは、翌日に控える重要選手大量リタイアの前触れに過ぎなかった。

この日も30名近い大規模な逃げ集団が形成され、前日は比較的大人しかった総合優勝候補たちが、活発な動きを見せる。

残り54km地点でメイン集団から飛び出したのが、モビスター・チームのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)。先行して逃げていたチームメイトのマルク・ソレル(スペイン)と合流し、メイン集団とのタイム差を開きにかかった。

さらに、この日最後の下りで集団から飛び出したのが、今年ジロ・デ・イタリア総合2位のトム・デュムラン。こちらも逃げていたチームんメイトのセーレンクラーウ・アナスン(デンマーク)と合流し、バルベルデたちに追い付く走りを見せた。

しかし、こうしたライバルたちの動きもチーム・スカイの統率力を前にして、全て水の泡となってしまう。

残り5km手前でゲラント・トーマスがアタックし、先行していたデュムランに追い付いた。

残された集団の中でも、昨年総合3位のロマン・バルデ(フランス/AG2Rラモンディアル)の連続アタックを抑え込んだフルームが、続いてアタックしたダニエル・マーティン(アイルランド/UAEチーム・エミレーツ)と共に集団を抜け出し、トーマスたちを追う。

先頭を単独で逃げていたミケル・ニエベ(スペイン/ミッチェルトン・スコット)は、ゴールまでラスト1kmの段階でトーマスたちとのタイム差を20秒ほど残していたが、ラスト1kmを切ってからデュムランを突き放して加速したトーマスが、この秒差を一気に詰めていく。

【第11ステージ ラスト1km】

最後はラスト400mでニエベを追い抜いたトーマスがステージ優勝。マイヨ・ジョーヌも獲得した。

難関山岳ステージを制し、勝利の雄叫びをあげるゲラント・トーマス

第12ステージ 再び有力選手が大量リタイア

アルプス3連戦の最終日はラルプ・デュエズを含む3つの超級山岳を含み、今年のツール最難関とも言えるステージ。この日の総獲得標高は5,000mを超える。

最難関ステージで再びリタイア選手が続出

第1週で2勝ずつ獲得した今大会最強格のスプリンターコンビ、フェルナンド・ガビリアとディラン・フルーネヴェーヘン。そして、キッテルやカヴェンディッシュと並ぶトップスプリンターの1人、アンドレ・グライペル(ドイツ/ロット・スーダル)もリタイアしてしまう。

また、この日最後のラルプ・デュエズの登りで落車し、胸椎の椎体骨折と診断されたヴィンチェンツォ・ニバリも大会を去ることに。

「ホテルに戻ってきたけれど、残念ながら診断結果は良いものではなかった。脊髄に骨折が確認されたんだ。明日は回復のためにホームへ戻るよ。みんなの愛を伝えてくれてありがとう!また次に」(抄訳)

石畳ステージと合わせ、スペクタルな反面、難関すぎるがゆえに多くの選手たちを犠牲にするコース設定に対し、SNS上でも疑問の声が相次いだ。

レースの展開は、ラルプ・デュエズの登りラストで集団からニバリ、ナイロ・キンタナ(コロンビア/モビスター・チーム)、ミケル・ランダ(スペイン/モビスター・チーム)などが次々とアタックするが、いずれも、チーム・スカイのエガン・ベルナルが単独で集団を牽引し、これらの攻撃を次々と吸収した。

結局、ベルナルはラルプ・デュエズの登り口から7kmに渡って単独で牽引。今大会最年少の21歳、初めてのグランツールにおいて、十分過ぎるほどの働きをした。

力強い牽引を見せ続けたベルナル。その後ろにはマイヨ・ジョーヌを着るトーマスとフルーム

ランダのアタックに付いていき、そのまま独走に持ち込んだロマン・バルデも、ラスト4kmを過ぎた直後に集団からアタックしたフルームに追い抜かれた。50km近く先頭を1人で逃げ続けていたスティーヴン・クライスヴァイク(オランダ/チーム・ロットNLユンボ)も、同じくフルームによって一気に抜き去られた。

しかし、フルームの独走も続かない。

デュムランがバルデ、トーマスを引き連れて集団を牽引し、フルームに追い付く。そのカウンターで再びバルデがアタックし、これが捕まえられると今度はデュムランが攻撃を仕掛けた。

ラスト1kmを過ぎてからは、追い付いてきたランダによるアタックも見られた。だが、いずれもマイヨ・ジョーヌを着るトーマスによって抑え込まれる。

【第12ステージ ラスト1km】

最後は彼が他の4名を引き離す強烈なスプリントで2日連続の勝利。30回に及ぶラルプ・デュエズ決戦の歴史のうち、初のイギリス人勝利であり、マイヨ・ジョーヌ着用者による勝利となった。

優勝候補たちをスプリントでねじ伏せたマイヨ・ジョーヌ。歴史的な瞬間となった。

実力者たちが力を発揮した第13〜15ステージ