固唾を飲む1kmTT決勝

1kmタイムトライアルで金メダルを獲得し、新たなアジア王者となった深谷知広選手。彼は自身が走り終えた時点で最速タイムを記録し、あとは残り選手の結果を待つのみであった。

深谷は決勝で全力を出し尽くし、日本チームのピットへ戻るやいなや倒れ込んだ。クールダウンのためローラーに乗りながら、電光掲示板へ映し出される他選手のタイムを冷静に見守っていた。

「世界選手権では1分フラットを狙う」深谷知広インタビュー/アジア選手権トラック2018

深谷の金メダルが確定、歩み寄る男

最終走者、予選1位イランの選手が走り終えた。タイムは依然として深谷がトップ。金メダルが決まった。

ローラーの深谷に歩み寄る男がいた。日本ナショナルチームのメカニック森昭雄氏だ。彼はチームのメカとして長年チームメンバーと共に国際大会へ帯同し続け、約1ヶ月及ぶマイアミ合宿でもチームメンバーと寝食を共にしている。深谷にとっても家族の様な存在だろう。

そんな森メカが、小さな紙を深谷へ手渡した。そこに書かれていた文字は「せかいせん行」。世界選手権への切符だ。

森メカが深谷の世界選手権出場へ対する想いを知り、目の前でその努力を見続けていたからこその祝い方だ。

喜びと悲しみを分かち合う関係

自転車トラック競技に限らず、あらゆるスポーツは選手が1人で戦うものではない。コーチ、メカニック、マッサー、ドクター…様々なスタッフ達も選手と共に戦い、喜びと悲しみを分かち合っているのだ。

勝負事は結果が全てでもある。しかし我々は、リザルトには表れない、0.001秒の裏側へ潜むストーリーこそが面白いとも感じている。選手やスタッフ、あらゆる関係者が出演者として紡ぐ、自転車競技のリザルトへ至る様々なドラマを、今後も伝え続けていきたい。

「世界選手権では1分フラットを狙う」深谷知広インタビュー/アジア選手権トラック2018