マルチプレイヤーの利
優勝したピドコックは、2か月前、トレーニング中に車と衝突して鎖骨を骨折している。数日後にはすぐにバイクトレーニングに復帰する姿をSNSにアップしていた(しかも室内トレーニングではなく野外のロードトレーニング)。
そこからたった2か月だ。それでも何の遜色もなく、それどころかむしろ、飛び抜けた安定感、スピードを見せつけた。
あと数日で22歳になるピドコックは、今シーズン、ロードレースのワンデーレースなどでも既に結果を残してきている。今回は落車によりリタイヤとなってしまったファンデルプール然り、現代はまさにマルチプレイヤー黄金時代といえるのかもしれない。
また今回で、イネオスグレナディアズに所属する選手が男子ロードレースに続いて勝利を挙げたことになる。さらに、2日後には再び富士スピードウェイ周辺にてロードタイムトライアルが行われる。
ここでも優勝候補はイネオスに所属するタイムトライアル世界王者のフィリポ・ガンナ(イタリア)だ。ツール・ド・フランスでは思うような結果を出し切れなかったイネオス勢だったが、このオリンピックで大いに暴れている。
優勝候補と目されていたオランダだが
一方で、男子ロードレース、女子ロードレース 、そして今日の男子MTBと全てでオランダが優勝候補とされていたが、全てどこかで噛み合わない。今回ファンデルプールの落車は、試走時に岩に取り付けられていたラダー(スロープのようなもの)が本番でもあると思ってのミスだったという報道もある。女子ロードレースに続き、フィジカルや戦略の面ではなく、情報伝達ミスという点で取りこぼしてしまっている印象だ。
27日(火)は女子MTBが控えているが、これに加え8月に開催されるトラック競技などで、自転車競技大国としての面目躍如となるだろうか。
競技人生の幕引き
山本は、7分21秒遅れの29位でフィニッシュした。メダル争いという点では遥か届かない位置ではあるが、この難コースでトップとのタイム差をここまで抑えての完走というのは、素晴らしい結果のように思える。
フィニッシュ地点では、この東京オリンピックを競技人生の集大成と置き、日本で一番、世界の舞台を経験してきた日本最高のレーサーの走りに大きな拍手が送られ、山本は笑顔で応えていた。
東京オリンピック 男子MTB リザルト
1位 | トーマス・ピドコック | イギリス | 1時間25分14秒 |
2位 | マティアス・フルッキガー | スイス | +20秒 |
3位 | ダヴィド・バレロ | スペイン | +34秒 |
4位 | ニノ・シューター | スイス | +42秒 |
5位 | ヴィクトル・コレツキー | フランス | +46秒 |
6位 | アントン・クーパー | ニュージーランド | +46秒 |
7位 | ブラッド・ダシュカル | ルーマニア | +49秒 |
8位 | アラン・ハザリー | 南アフリカ | +1分19秒 |
9位 | ヨルダン・サルー | フランス | +1分36秒 |
10位 | ミラン・ヴェイダー | オランダ | +2分7秒 |
29位 | 山本幸平 | 日本 | +7分21秒 |
Text : 滝沢佳奈子(サイクルスポーツ)
27日(火)も伊豆MTBコースにてマウンテンバイクが開催。日本からは今井美穂が出場する。28日(水)には再びロードレース選手らが出場する個人タイムトライアルが行われ、日本からは與那嶺恵理が出場。テレビ放送のほか、インターネットで生配信の視聴が可能だ。
観戦チケットをお持ちの方は、「声を出しての応援を控える」「直行・直帰」などの観戦ガイドラインの事前のご確認を。
チケットホルダー向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン(Ver.1 2021年6月23日)