MTB グラビティ型種目
グラビティ型の種目は急な下り坂のコースがメインで、エンデュランス型と比べて危険度が高いことが特徴。そのため、バイクやプロテクターもエンデュランス型とは違ったものとなっている。
ダウンヒルインディヴィジュアル(DHI)
DHIとも表記される「ダウンヒルインディビジュアル」。その名の通り、下り道(ダウンヒル)のみでコースが構成されている。ほとんどのレースが山岳部で行われ、2〜5分のコースを1人の選手が走行し、そのタイムを競う。
コースほぼ全てが下り道であるため、その最高スピードは男子で時速約80km。「下る」というより「落ちる」ような感覚だ。自転車競技の中でタイヤと地面が接触する時間の割合が最も少ない競技である。
コースには木と木の間や岩のむき出した箇所、急カーブなど、障害となる要素は多い。そのためDHIの選手には高い走行テクニック、走路を見極める動体視力、強い体幹と、それらを恐れない勇気が要求される。
DHIのバイクやプロテクターにも注目だ。下ることに特化したDHIでは、バイクやプロテクターが頑丈にできている。選手はフルフェイスタイプのヘルメットを着用し、バイクにはより幅の広いタイヤ、より太いフレームが採用されている。
DH用のバイクは、あらゆる自転車競技の中で最も重い。DHIのバイクに求められるのは、軽量化よりも頑丈性と操作性なのだ。
フォークロス(4X)
一斉に4人の選手がスタートし、その着順を競う「フォークロス(4X)」。上述したXCEと同じように、各レースの下位2人が脱落し、上位2人が次のステージに進出できる。
コースは主に岩やジャンプ台を含む急な下り坂で、選手たちは30秒〜1分でフィニッシュする。よってスタート直後の加速力と、急カーブや岩場を含む急坂を下っていくテクニック、そしてそれらを可能にする精神力や体幹の、わずかな差が勝敗を分ける。
短い距離を無駄なく走りきるため、バイクはフロントのみサスペンションが搭載される「ハードテイル」を採用。その他はDHIのバイクと同様、リアギアと前後にブレーキが搭載されている。また危険なコース設定のため、選手はフルフェイスタイプのヘルメットを着用しなければならない。
映像を見てみるとわかるが、4Xは「BMXレーシング」と非常に似ている。現に4Xの選手にはBMXレーシング出身の選手が多く、逆もまた然りだ。
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エンデューロ(END)
グラビティ型であるが、持久力や耐久力が求められるエンデューロ(END)。他種目と異なり、全選手が複数のステージを走行しその合計タイムを競う。しかしそのステージ構成はやや複雑で、ENDの選手は複数の「計時ステージ(Timed Stages)」と「中継(リエゾン)ステージ (Liaison Stages)」の2種類を1日または2日で走らなければならない。
計時ステージではダウンヒルと同等仕様のコースを1人ずつ走行し、フィニッシュタイムを記録。中継ステージは計時ステージのスタート地点に到達するためのステージで、標高の高い地点まで登らなくてはならない。しかし「中継ステージ」と言うだけあり、規定の時間までにフィニッシュすればOK。だだし万が一時間内にフィニッシュできない場合はペナルティが科される。
時間内に計時ステージのスタート地点に到達し、ダウンヒルの走行タイムを記録。この行程を繰り返し、全計時ステージのタイムの合計が最も早い選手が勝者となる。
主に山岳部で開催され、計時ステージのダウンヒルは短距離型から15分を超えるコースなど様々。中継ステージの登り坂に高い難易度が設けられた大会もあり、コース設定にはバリエーションがある。
アルパインスノーバイク(ASB)
https://youtu.be/uuuOJrbhJng
UCI公式種目の内、唯一雪の上を走る「アルパインスノーバイク(Alpine Snow Bike、ASB)」。Alpine(アルパイン)とは「アルプスの」を意味する形容詞(英語)。グラビティ型種目であり、既存のスキー場に設置されたコースを下りタイムを競う。
コースには岩や木々等の障害物はなく、その代わりに蛇行して設置されたいくつもの旗門の間を正確に通過しながら下る。わかりやすく言うと、冬季オリンピック種目であるアルペンスキーのMTB版だ。(ちなみにアルペンはドイツ語でアルパインと同義)
ASBで採用されているバイクは通常のダウンヒル種目と同様のものであるが、タイヤのみ少し異なる設計が施されている。若干広めのタイヤが採用されており、雪上でよりグリップ力を強めるため、スパイクを搭載したタイヤの使用が認められている(ASB以外の種目では禁止)。
UCIの公式種目に登録されたのは2019年、最も新しい競技の1つだ。