歩き、ゴールラインを目指す姿に観客から惜しみない声援

もう一人の主役

そこにはドラマがあった。競輪は賭けの対象であると同時に、自転車競技、すなわちスポーツである。スポーツの魅力は興奮と感動だが、このレースの観客はその両方を体感したはずだ。

KEIRINグランプリ2017、その主役はもちろん2度目の優勝を果たした浅井康太選手だが、もう一人のドラマを作った男がいる。深谷知広選手だ。

2度目の優勝“覇王”浅井康太!我慢しきれず男泣き。武田、新田、渡邉選手コメント/KEIRINグランプリ2017

前検日の共同記者会見にて

それはゴール直前に起きた。最終コーナーを抜けようかという所で諸橋愛桑原大志戦選手と共に落車。

場内はどよめくも、直後に浅井選手らがゴールし、勝者が決まる。バックストレートでガッツポーズを決める浅井選手へ歓声が沸き起こる。

KEIRINグランプリ2017優勝の浅井康太選手/Photo : JKA

しかしゴールした選手たちがホームストレートへ戻る前に、観客の関心は最終コーナーへ横たわる3名へと戻った。桑原選手はその後すぐに立ち上がり、再び自転車へ跨ってゴールを目指すが、深谷選手と諸橋選手はなかなか起き上がらない。

再びゴールを目指す桑原大志選手

諸橋選手には担架が呼ばれ、棄権となった(その後の審議で押し上げ失格)。

何とか起き上がり、必死に痛みをこらえながら再び自転車へ跨がろうとするも、前輪からはタイヤが外れ、落車の激しさを物語る状態だ。リムがむき出しになり、さらにはタイヤも絡まりとても乗れる状態にない。

ゴールまで、一歩一歩