トレードチームは何故あるの?

トレードチームがあることの大きな意味は「国の代表選手ではない選手でもワールドカップへの出場が可能」という点にある。各国の競技連盟の代表に選ばれる人数には限りがあるので、世界的に実力があっても国内の選考で漏れてしまう選手がいる。また、国によっては「そもそも特定の種目に力を入れないので大会に参加しない」といった戦略を取るところもある。そんな場合、走りたくても走れない選手が存在してしまう。

もちろん他にも様々な意味(UCIポイントを稼ぎたい/若手に経験を積ませたい/スポンサーを通じてもっと競技を広めたいなど)があるが、実力の高い選手/潜在能力が高い選手、及び競技へのモチベーションが高い選手で、その国の代表に入れなかった場合の受け皿になっていることが大きな意味となっている。

HUUB Wattbike Test Teamの躍進

ここではHUUB Wattbike Test Teamを例にあげよう。トレードチームながらも2018-19シーズンのワールドカップ第4戦チームパシュートで優勝した強豪だ。HUUBの選手たちは代表チームに入れていなかったため、それぞれ仕事や大学に通いながら練習を行った。そしてトレードチームとしてワールドカップに出場し、世界トップの実力を示したというドラマチックな背景がある。このように自ら世界トップレベルの大会で実績を残して注目を受け、自分の所属する国での代表選手に選ばれる可能性を高めた。

現HUUBはアマチュアチームとして2017年から「Team KGF」(翌年にHUUB Wattbike Test Teamに改名)としてワールドカップに参戦。2017-2018UCIワールドカップ第5戦個人パシュートではチャーリー・タンフィールドが世界記録に迫るタイムでチームに初優勝をもたらした。そして先述したように2018-19シーズンのワールドカップ第4戦ではチームパシュートで優勝も果たした。

こういったドラマが生まれるのもUCIトレードチームならではだろう。

ついにHUUBが初の栄冠・男子チームパシュート/2018-2019トラックワールドカップ第4戦

しかしUCIトレードチームとして活動することは簡単ではない。「代表チームのように競技連盟からの活動資金支援が無く、自らスポンサーを集めて競技活動を行わなければならないこと」、そして「世界選手権の各大陸選手権に出場できないこと」などが理由として挙げられる。

著名なチーム

UCIトレードチームは日本含め世界で全38チーム。中でも著名なチームはオランダ籍のプロチーム「BEAT CYCLING CLUB」やワールドカップ優勝の実績を誇る「HUUB Wattbike Test Team」、新田祐小林優香らが所属する「dream SEEKER」など。

ナショナルチームクラスの世界トップレベルの選手もいれば、HUUB Wattbike Test Teamのように未知なる才能を秘めた選手など様々である。

チーム存続の鍵は世界トップクラスの大会に出て、成績を残すこと

UCIが新たに発表した大会数や開催期間の変更、そしてワールドカップから「UCIトレードチーム」を除外することは、こうしたチームにとっては生命線を切られることになるのは間違いないだろう。現在BEAT CYCLING CLUBやHUUB Wattbike Test TeamらがUCIの大幅変更に抗議する為に署名活動を行なっている。来シーズンからUCIトレードチームの行方はどうなるのか、今後の展開から目が離せない。

参考:UCI Cycling Regulations Part 3 Track races