中距離はタレント選手がいなくなる?
もう一つ大きな心配事項は、中距離種目への影響だ。
トラック競技はこれまでロードレースシーズンとは異なる冬期に行われてきたが、夏期に変更される事で、ロードレースとの兼業選手は取捨選択を迫られる。ネーションズカップが開催される予定の7〜9月はロードレースシーズンの真っ只中。ワールドツアー選手のエリア・ビビアーニ、オリベイラ兄弟らはどちらを選択するのだろうか。
ワールドツアー選手だけではない。中距離選手の大半はロードレースでも活躍をしており、トラックとロードどちらを選択するのか迫られる事となる。
スリムな大会運営
トラックワールドカップは近年、全6戦で行われてきた。概ねヨーロッパ2戦、アジア&オセアニア2戦、アメリカ大陸2戦月、毎年10月〜1月に行われてきた。これを全3戦と半分に削減する。
この背景には各大会の財政的事情があるだろう。各大会は大抵の場合、開催国の連盟が運営を行い、その費用は入場料収入、TV放送権の販売、大会スポンサーなどにより賄われる訳だが、実情は非常に厳しいもの。
トラック競技人気が高いヨーロッパはまだ良い方で、競技自体の認知が低い国で開催される場合、空席のほうが目立つ大会もある。正直「スカスカ」な大会など珍しくもない。
全6戦にまで拡大された理由は、大会数を増やすことで露出機会を増やし、スポンサー獲得やファン層の拡大を狙っていた様だが、今回の改変は大きな方針転換だ。
観戦のしやすさ
出場チーム数を限定する事で、観戦のしやすさを図ろうという目論見もあるだろう。
1人の選手が大会毎に異なるチームで出場する事で見分けが付きづらくもあった。開催国のトレードチームが大量出場している場合「あのチーム何?」という「観ていてよくわからない」という状態でもあった。
選手個人、チームそれぞれへのファン獲得という観点を両立する事で、コアファンの増大にも繋がるはずであり、出場チームの固定化は有効であろう。しかし、それにはトレードチームの出場を除外する必要までは無いのではないか。
先に挙げたHUUB Wattbikeの様な多国籍チームも存在する方が、彩りが生まれて良さそうなものだ。