競輪選手養成所 第125・126回生 卒業式

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それぞれの決断 中石湊・山崎歩夢・阿部英斗インタビュー

トラックナショナルチームのジュニアカテゴリーで活動し、125回生として入所した中石湊・山崎歩夢・阿部英斗。山崎は2023年6月にジュニアのアジア選手権、中石は2024年2月にエリートのアジア選手権、そして3候補生共通して2023年11月のジャパントラックカップに出場。候補生生活のかたわら、競技にも参加してきた。

入所時から継続的にインタビューをしてきた3人に、門出の日、改めてお話を伺った。

阿部英斗(福岡)

Q:卒業おめでとうございます。今のお気持ちは?

実感できていない部分が大きいです。明日もチャイムが鳴るんじゃないか?というドキドキがあります。

Q:明日からはどこに?

今日のうちに福岡に戻るので、福岡に。練習を再開します。

Q:休みはなく練習再開でしょうか?

はい、たぶんないと思います。

Q:卒業記念レースの感想を聞かせてください。

最後がこのような形で終わってしまうのは不甲斐ないです。このまま卒業して良いのか、という気持ちがとても強く出た2日間でした。

Q:この1年で一番伸びたと思う部分は?

競技力、全体的な能力が上がったと思います。1年通して70以上のレースをしたのは人生で初めてのことですし、失敗しても「次はこうしてみよう、ああしてみよう」という試行錯誤ができた期間でした。

Q:入所した頃は「競輪大好き、競技よりは競輪に気持ちが寄り気味」というお話を聞かせていただきました。今後ナショナルチームにも籍を置かれると思うんですが、気持ちに変化があったのか、どのような考えでいるのでしょうか?

競輪選手を目指して15年間、人生のほとんどを自転車競技で過ごしてきました。競輪選手になりたくて自転車競技をやってきました。でも入所前の2ヶ月、ナショナルチームで練習させてもらって、ジェイソン・ニブレットコーチに練習を見ていただいたりアドバイスをいただき、ナショナルチームの太田海也さんや長迫吉拓さんに優しく手厚くしてもらいました。

「本当に強くなりたい」と思ったとき、ナショナルチームのコーチや先輩方の優しさ、練習環境はすごく良いです。「一番強くなるのはここなんじゃないか」と入所して感じたので、ジェイソンコーチのもとでやっていこう、と思います。

Q:短距離チームでも数少ない競輪選手「じゃない」選手である長迫選手の名前が出るのは、面白いですね。

すごく可愛がっていただいて(笑)いつもいじってくれます。なかなか接点がなかったので、そうやって関わってくださるのが嬉しいです。

長迫吉拓&太田海也

Q:5月のデビューまで、どのように過ごすのかを教えてください。

1回地元に帰るんですが、4月の中旬くらいに静岡に戻ってきて、ナショナルチームに合流させていただきます。そこから1ヶ月ぐらいデビューに向けて練習していきます。

Q:5月にはジャパントラックカップ(伊豆で行われる国際大会)もありますが、参加するのでしょうか?

はい、その予定です。競技も頑張ります。

Q:さて、卒業して晴れて自由の身となりました。何かやりたいと思っていることはありますか?

特別何かしたいっていうのは……めっちゃ考えたんですが、「入所前の生活に戻りたい」、です。自分の好きな時間に起きたいとか、点呼したくないとか、美味しいもの食べたいとか……でも一番最初に、母親に感謝を伝えたいです。

Q:最後に、全国の競輪ファンに「俺はこういうやつです!」と自己アピールしてください。

4歳くらいから自転車一筋でやってきました。自転車愛、競輪愛は人一倍あると思います。熱いレースを届けられたらなと思います!

中石湊(北海道)

「阿部候補生とは違うポーズで」とオーダー

Q:卒業した今の気持ちを聞かせてください。

嬉しいです。でも同期のメンバーとこんなにたくさん一緒に過ごす時間はきっともう一生ないから、そういう意味では悲しさもあります。

Q:卒業記念レースの振り返りを聞かせてください。

自分のしたいレースはできたと思うんですが、着的には車券に貢献できない位置。自分がもがける距離を把握できていなかったと思います。

Q:今の自分の中の課題は?

アジア選手権のすぐ後に卒業記念レースを走って、パフォーマンスの安定性がなかったと思います。カーボンと鉄の違いをしっかり区別できず、カーボンの踏み方をしてしまった部分もありました。しっかりパフォーマンスを出せるような体作りをしなければいけないと感じます。

Q:デビューまでの2ヶ月間はどのように過ごしますか?

地元に帰ってしっかり練習してから、阿部と同じく4月ごろにナショナルチームに合流します。

Q:地元というのは大阪ですか、それとも北海道?
※中石候補生は大阪生まれだが、高校からは自転車競技のため北海道で暮らしてきた

北海道です。でも親戚に挨拶するために、一度大阪にも行くつもりです。

Q:親戚の方に競輪ファンはいらっしゃるんですか?

たぶんいないです。「知らない世界に入ってくんだな、がんばれ」って感じだと思います。

Q:地元に帰ってやりたいと思っていることはありますか?

映画を見にいきたいです!ホラー映画が好きで、DVDプレーヤーはあるんですが、それじゃあ迫力がないから。映画館で刺激を求めたいです。

Q:今後の競輪と競技、それぞれの意気込みを聞かせてください。

KEIRINグランプリを見て刺激を受けて、そこで優勝したいと思いました。グランプリで優勝するというのが競輪での一番大きな目標です。先行で逃げ切りたいという気持ちもありますが、自分の走りを貫きたいという気持ちもあります。

競技の方では、オリンピックで優勝できる選手になりたい。そしてオリンピック種目ではないですが1kmTTが好きなので、この種目で世界選手権で優勝したいです。

Q:1kmTTが好きって言い切れる人もなかなかいないと思います。

そうっすね(笑)しんどいですけど高校3年間この種目をやってきましたし、しっかり「タイム」として結果が出るところが好きです。

Q:最後に自己PRをお願いします。

北日本の先行として、先頭に立ち、先行で優勝できるような選手になりたいです。見ているお客様が楽しめるレースをしたいと思います。応援よろしくお願いします。

山崎歩夢(福島)

「前の2人と違うポーズで」とお願いした結果……「3」

Q:卒業記念レースでは落車されてましたが、怪我の具合はいかがですか?

擦過傷と軽い打撲でした。軽い怪我で良かったです。競輪の中での動き、どこに自分がいたら危ないのかがよくわかっていなかったと思います。その結果が今回の落車。どうしたら良いのか、という経験を積めたのは良かったです。

Q:ちなみにこれまでで一番大きな怪我は?

まだ骨折をしたことがないんです。大体今回と似たような怪我です。

Q:ではこれからの競輪選手人生できっとどこかを折るんですね……

そうですね(笑)

Q:改めて、卒業した今の気持ちを聞かせてください。

過ぎてみるとあっという間でした。デビュー後に対する不安はありますが、自分の目標はグランプリで先行して優勝すること。そこを目指してしっかり練習に取り組んでいこうと思います。

Q:この1年で一番伸びたと感じるのはどのような部分ですか?

一番はメンタル面です。高校生だった頃より、今の方が辛い場面でもしっかり立ち向かえるようになっていると思います。

Q:辛い場面というと、例えば?

アジア選手権のスプリントの3本目で、心が折れそうになった時とか……こういう厳しい生活をしたということ自体が自分の自信につながっていますし、他にもいろんな経験をさせてもらいました。そういったことからメンタル面が成長したと思います。

Q:ちょうど最後の1人で前の2人が退室してますので、山崎候補生から見た2人がどんな人なのか教えてもらえますか?他子紹介というやつです。

阿部英斗くんは普段から明るくて、いろんな人と気さくに話しているイメージがあります。レース展開的な面は一番うまい。

中石くんは高校からずっと同じ種目で戦ってきて、いまだに勝ててないですが……競輪や自転車競技への思いが人一倍ある。尊敬する部分があるなと感じます。

Q:では、ご自身はどんな人ですか?

「競輪で一番強くなりたい」という思いは、一番あると思います。この気持ちを忘れずに競輪人生を過ごしていきたいです。

Q:今後の競技への関わり方を教えてください。

ナショナルチームに入らないことにしました。競輪1本でやっていきます。

Q:競技をやらないという決断は、どういうところで決めたんでしょうか?

オリンピックに対する情熱より、グランプリで優勝することへの情熱の方が強いとわかったからです。今の一番の目標は「ヤンググランプリで先行で逃げ切ること」。そこを目指して魅せる走りをしていきたいです。

Q:競輪1本の新たな人生に向け、5月のデビューまではどのように過ごされますか?

目の前の課題を一個一個解決して行って、自分が5月のデビューまでにしっかりステップアップできるよう練習を重ねたいです。それから、焼肉食べたいです(笑)

5月からルーキーシリーズがスタート

候補生たちは5月のルーキーシリーズを皮切りに競輪選手としてデビューする。ルーキーシリーズの日程は以下の通り。

5月3日〜5日 富山競輪場
5月10日〜12日 平塚競輪場(ナイター)
5月24日〜26日 函館競輪場(ナイター)
5月31日〜6月2日 松山競輪場(ナイター)

なお5月10日〜5月12日には伊豆ベロドロームにてトラック競技の国際大会『ジャパントラックカップⅠ/Ⅱ』が開催予定。インタビューを実施した阿部、中石のほか、卒業記念レースで優勝した森田一郎や仲澤春香もナショナルチームに関わっていく旨が言及されている。

競輪、そして競技の世界でも活躍する若い選手たちを、ぜひ応援していただきたい。

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