「日本代表へ入るチャンスが意外と近くにある」
Q:ではトラック競技日本ナショナルチームの選手となった経緯を教えてください。
全国高校選抜の個人パシュートで3位に入賞できたことがあったのですが、その走りを会場で見ていたトラック競技ナショナルチームのジュニアコーチにジュニアチームへ勧誘いただきました。
「日本代表へ入るチャンスが意外と近くにあるんだ」と思ったのを覚えています。
その後、大学でも自転車競技部に入部しました。きっかけは1年上の先輩がナショナルチームに入ることになり、私もその背中を追いかけたかったからです。
大学3年生の時にやっと「全日本選手権トラック」に出場する機会があり、レースでめちゃめちゃアタックを仕掛けたんです!自分よりレベルの高い選手がいる中で、ただ追走するのではなく積極的に走ることを意識しました。
その走りを見ていた当時のナショナルチームのコーチが、「ナショナルチームと一緒に練習してみないか」と言ってくださりました。一緒に練習していくうちに正式にナショナルチームのエリートカテゴリーの選手として活動していくことになりました。
Q:高校の全国選抜でも、大学生時代の全日本選手権でも積極的な走りが評価され、ナショナルチームへの道が開けたんですね。
特に大学3年での全日本選手権では、側から見たら無謀な走りだったと思いますが、そのやる気が評価されたんじゃないかと考えています。
日本代表への道がイメージしやすい競技
Q:オリンピック出場を志したのはいつ頃でしょうか?
ナショナルチームに入った時ですね。
中学までやっていたバスケや水泳では、地区大会・県大会・関東大会・全国大会とステップがとても多い印象でした。
自転車競技では地区大会を勝ち上がると、その次に全国選抜やインターハイに出場することができます。
私の場合、高校から始めた自転車競技で全国選抜に出場でき、その大会での走りをきっかけにナショナルチームへ入ることができました。自転車競技は日本代表への道がイメージしやすい競技なのかなと思いました。
ですがナショナルチームに入り相手が世界中の選手となった時、とても大きな壁を感じましたね。
オリンピアンのトレーニングや食生活は?
Q:選手時代、トレーニング日の1日の流れはどのようなものでしたか?
東京2020オリンピック前の夏であれば、朝5時に起き3、4時間ほどロード練習。お昼休憩を挟んだ後、午後はwattbikeなどに乗るという2部練習が基本でした。
朝8時に自宅から伊豆ベロドロームまでロードバイクを漕ぎ、到着後にトラック競技練習。そして午後はロード練習やwattbikeなどのパワー系トレーニングをするパターンもありました。
その他、私の場合はウェイトトレーニングが週2回ありました。中長距離種目の選手だったのでパワー系のトレーニングと持久力を鍛えるトレーニングを両方行っていました。
Q:ナショナルチームでの食生活について教えてください。
基本的に自炊で、お米をしっかり食べていました。
学生時代は食べるとすぐ体重も増える体質でしたが、20代後半からは逆にしっかり食べなければ体重が落ちてしまうようになったので、1日2合は絶対に食べるようにしました。おかずも色々なタンパク質を取れるようにしたり、ビタミンや乳製品が毎食取れる献立を意識していました。
基本は1日3食ですが、練習の強度によって間食を加えたり調整していました。サプリメントも必要に応じて摂取していました。
Q:トレーニング中におすすめの間食や補食はありますか?
強度の高いトレーニングの最中には固形物を摂取することが難しいと思いますので、私の場合はジェルなどを良く摂取していました。特にロードの練習は3、4時間継続して行うので、エネルギーを枯渇させずに高い強度を保ったままトレーニングを行うために、常にジェルを携帯していました。
Q:選手時代のリラックス方法を教えてください。
私はオフの日も自転車のことを考えるとレースのことが頭をよぎり落ち着かなくなってしまう性格でした。なので伊豆で生活していた時は温泉に行ったり、1日マッサージを受ける日などを作り、体と精神を休める日を作っていました。海も遠くなかったのでSUPをしたり、アロマを焚いて気持ちを落ち着かせたりもしていました。
ですが自転車から完全に離れる日もあれば「リカバリーロード」といって、ゆっくりロードバイクに乗って筋肉を休ませる休日もありました。
トラックサイクリングキャンプで気軽に相談「女性ならではの悩み」
Q:生理や股ズレなど、女性アスリート特有の問題に関してはどのように対処されていましたか?
当時は女性の競技人口も少なく、相談できる人が少なかったり専用のクリームなどもあまり入手できませんでした。ですが今は女性の競技人口も増えてきています。まずは信頼して相談できる人や情報源を見つけることが重要です。
生理に関しては、生理が原因でなかなか練習に身が入らないことがあると思います。私の場合は中途半端に練習をこなすのではなく、専用のピルを処方してもらい生理をコントロールしたり、練習をすることが厳しい時はメリハリを付けてしっかり休み、翌日からその日の分もしっかり練習するようにしていました。
親身に相談に乗ってくれる女医の先生も今では多くいらっしゃるので、気軽に相談してみてほしいです。
もちろんトラックサイクリングキャンプでは女子自転車競技の先駆者である方々から女性のトレーナーの方もいらっしゃいます。キャンプでも気軽に相談していただきたいです。
トラック競技は「カッコ良いスポーツ」
Q:女子においても段々と自転車競技の競技人口が増えています。
当時では考えられない程、レベルも上がっていると思います。現在ではインターハイでも女子のカテゴリーが実施されており、活躍する場も増えています。
SNSなどで大会の様子をチェックしていますが、レベルの高さと面白いレース展開に驚いています。自転車競技がメジャースポーツに近づいていると日々実感しています。
Q:最後に中村妃智さんが今後行っていきたい活動について教えてください。
普段から乗っている自転車が競技として存在すること、身近な乗り物でスポーツを楽しめるということを知れたことが私の人生を大きく変えました。
今回のトラックサイクリングキャンプに参加していただいた皆さんのように、自転車競技をこれから頑張りたい、始めてみたいと勇気を出して一歩踏み出してくれる人たちをもっと増やすために、裾野を広げる活動を続けていきたいです。
突き詰めていくと本当に苦しい時もある競技ではありますが、とてもカッコ良いスポーツですし、自分の足を使ってここまでスピードの出るスポーツは他にないと思います。
そうした自転車競技の魅力をより多くの方に伝えて、自転車競技をさらに普及させていきたいです。
「小さな目標でも積み上げればオリンピックへ」
Q:自転車競技に打ち込んでいる方、まだ始めたばかりの方にもメッセージをお願いします。
私は高校生の時にジュニアのナショナルチームに入っていたとお話ししましたが、当時の500mのタイムは42秒台だったり、高校最後の大会での2km個人パシュートのタイムは2分53秒で、今聞くととても速いとは言えないタイムでした。
ですが毎回毎回小さな目標を達成することを繰り返していくことで、どんどん成長することができました。大会でのタイムや順位だけでなく、練習でも前日のワット数や回転数、それを維持できる時間を少しでも上回ることを意識していました。
常に自分自身を更新し続けることを意識することで、小さな目標でも積み上げればオリンピックという舞台に到達することができました。
「頑張っている人はカッコ良い!」
目標を持っている時点で素晴らしいと思うので、叶えようと努力することに誇りを持って頑張ってほしいと思います。
目標を達成できなかったとしても、その道のりが大切な財産として残りますので、自分を誇りに思ってたくさん頑張ってください!頑張っている人は本当にカッコ良いです!
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