遅咲きの花は、大輪を咲かす
2006年のロードレース世界選手権にケニア代表として出場したフルームは、当時20歳。U23個人タイムトライアルで36位、U23ロードで45位という平凡な記録であった。
この頃のフルームといえば、少年時代の高地生活による心肺機能の高さがあったものの、ライディングテクニックやレースの駆け引きとは無縁、レース環境においても、整備からコーチ役まで一人何役もこなさねばならなかった。
その後2007年に南アフリカの「コニカミノルタ」とプロ契約、翌年にはレース環境の充実を求めイギリス「バルロワールド」へ移籍した。そして25歳となる2010年がフルームの転機となる。「チーム・スカイ」への加入だ。
後に確執を生むブラッドリー・ウィギンスも同年、大エースとしてチーム・スカイへ加入。一方のフルームは、普通のアシスト選手としての扱いだった。
チーム・スカイの理念は「1%の積み重ね」である。小さな改善を積み重ねれば大きな成功へ繋がるというもので、選手を細かく指導していく。真面目なフルームにとって、チームの厳密な管理体制は性に合っていたのかもしれない。元来の心肺能力に技術と戦術が加わったことで、めきめきと頭角を現しはじめた。
2013年、ついにエースの座を勝ち取ると、ツール・ド・フランスで初の総合優勝を含め、5つの大会で頂点に立った。
その後、2015年からツール・ド・フランス3連覇、2017年にはブエルタ・ア・エスパーニャも制覇し、史上3人目の同一年にツールとブエルタのダブルツール総合優勝の偉業を達成。
こうして絶対王者となったフルームが次に狙うのは、2018年のツール・ド・フランス5度目の制覇。すなわち史上5人目の「5勝クラブ」へ名を連ねることだ。