自転車トラック競技フォトグラファーが撮影した様々な瞬間、その背景にあるストーリーを解説するコラム『MOMENTS』。第1回は、2017年11月にイギリス・マンチェスターで行われた『2017-2018トラックワールドカップ第2戦』女子スプリント決勝。

当たって砕けろ

初めて海外の大会で撮影をしたのが『2017-2018トラックワールドカップ第2戦』だ。

まさか自分が海外で開催されるワールドカップの撮影を行う日が来るなど想像もしていなかった。それ故、短期登録で日本の競輪へ来ていた選手以外、ほとんど「誰?」だったし、ぶっちゃけるとルールもまともに知らなかった。

不安もあったが、それ以上に初の海外取材でもあり、とにかく当たって砕けろで撮影をしに行ったのが懐かしい。

クリスティーナ・フォーゲル

初めて目の辺りにした世界レベルのトラック競技。

この大会で既にケイリン、チームスプリントで金メダルを獲得していたクリスティーナ・フォーゲルは、大会最終日に行われたスプリントでも圧勝劇を繰り広げた。無知な自分でも十分な程の衝撃的な強さだ。

ウィニングランではヘルメットを脱ぎ、両腕を大きく振り上げながら「もっと盛り上がれ!」と言わんばかりに観客を煽る。マンチェスターベロドロームの熱気は、完全にクリスティーナへと注がれた。

「これがヒーローか」

会えば気の抜けたフランクな受け答え。ジョーク好きな彼女は、レースで見せる張り詰めた表情とのギャップがまた、誰からも愛されるヒーローたる所以なのだろう。

彼女ほど虹色のジャージが似合うヒーローは他に居ない。

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写真&文:Shutaro Mochizuki