短距離チーム、5年間の旅の終結

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約束を果たしに

新田祐大、脇本雄太、小林優香の短距離代表3人は全員、この東京が競技人生最後のオリンピックになると見据えている。1年延期の判断が下され、他国では引退を表明する選手もいた。

脇本は「2年延期だったら引退していた」と過去のインタビューで語っており、年齢の限界を感じていた。

「肉体の限界突破はもちろん、精神的な限界も。リオオリンピックから数えて、競技年数は8年を超えています。頑張っているんですけど、年齢だけはどうしても越えられない壁があるのかなと思っているので。走りたい気持ちはあるけども、しっかり我慢しながらやっていくしかないのかなと思っています。焦りもありつつという感じです」

年齢による体力的な限界を感じつつ、その限界をさらに1年間越え続けなければならない精神的負荷は、想像の域を越える。

ロンドンオリンピック選考の前、自転車を始めた時から背中を押し続けてくれた母が亡くなり、モチベーションを失った。

しかしロンドンオリンピックで他の選手が走っている姿を見て「また競技をやりたい」と感じた。母のためにメダルを取りたいという執着心が脇本を突き動かし、再び競技へと戻った。脇本は、2016年のリオオリンピックに出場。ケイリンでは13位という結果だった。

成し遂げたいitは「執着心」MAKE it HAPPEN 脇本雄太編

東京オリンピックに向けたブノワ体制がスタートすると、すぐに脇本に声が掛かった。

「リオが終わったあとからブノワが入ってきて、自分を取り巻く環境が一変しました。オリンピックで金メダルを獲るつもりで、集中してトレーニングに臨めと言われています。自分はすごく緊張するタイプなんですが、楽しくレースをしろと言われました」

また2018年、2019年のシーズンでレースを続けたことにより、「自転車IQ」が染み付いてきたと脇本は言った。視野が広がり、この場合はこう、などといった固まった考えにとどまらず、体が勝手に反応できるようになっていた。また、メンタル面の大切さも痛感した。

そして、2020年の世界選手権ケイリンでは銀メダルを獲得。それでもレース直後の一言は「うれしくないですね」。目指したのは勝つことだけだった。

その後、東京オリンピックの延期が決まった。精神的に計り知れないほどのダメージを受けたが「金メダルに向けて、半年では間に合わなかったところを、1年間の猶予ができた」というブノワの言葉で持ち直すことができた。

2020年の世界選手権の映像を見て、肘が開いているフォームを改善しようと空力性能の向上に着手。延期の1年だけで、見るからにハンドル幅は狭くなった。

この5年で変化について脇本はこう語る。

「リオオリンピックの時は『(メダルを)獲れたらいいな』という楽観的な考え方でした。でも今回の東京大会に関しては、『絶対獲る』という目標、ターゲットに変化しているのかなという感覚です」

脇本が狙うは、ケイリンでの金メダルただひとつ。「次は世界一」という亡き母との約束を守りに、最後の挑戦へと向かう。

最後と決めたから

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