下の世代を育てていきたい

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「自分のため」だけなら、ここまで続けてこなかった

Q:東京オリンピックについて「ようやく来た」という言い方をされていました(前編より)。この「ようやく来た」オリンピックとは、中村選手にとってどういうものでしょうか。

何度も諦めかけたものでした。「ようやく手に入れた。この瞬間を待っていた」という感じです。

ダメだと思っていたけど、周りの応援があったので続けてこれました。そうじゃなければ引退していたと思います。

ギリギリの精神状態の時期もありました。「今『中長距離、解散』って言われたらすぐに千葉に帰るのに」と思っていた時期もあったし、チームパシュートがうまくいかなくて、だからと言ってマディソンのトレーニングも方針的にできなかった時期もあった。でもほとんど諦めていた時にチャンスが巡ってきました。だから「このチャンスをモノにできてよかった」と心の底から思います。

オリンピックは「恩返しの場」という気持ちが強いです。「自分のために走らなきゃダメだよ」と言う人もいますが、私は「みんなに見てもらいたい」という気持ちが強いです。自分が走っている姿を応援してくれた人たち、支えてくれた人たちに見て欲しいと思っています。

私にとって、自転車競技は「自分のため」だけじゃないんです。「自分のため」だけだったらもうとっくに辞めていました。たくさんの人のおかげでここまで続けてこれたから、活躍している姿を見てもらう最高の舞台としたいです。

Q:オリンピック、絶対に開催して欲しいですね。

そうですね。会社にもオリンピックにはまだまだ遠い場所にいる時に採用してもらって、ここまで来れましたので。本当に無事に開催してもらって、みんなに観てもらいたいです。

紆余曲折と長い不安の時間を経て、大舞台の切符を掴み取った中村妃智。「みんなのために」走る彼女の姿を、2021年夏に目に焼き付けたい。