2019-20シーズンのトラックワールドカップではスプリントで3つ(第2/3戦銅メダル、第4戦銀メダル)、チームスプリントで2つの金メダル(第4/5戦)を獲得し、ファンを大いに沸かせた深谷知広選手。延期となった東京オリンピックには補欠として選手登録予定となっている。そして競技と競輪を兼任する他の選手たち同様、競輪への出走も増えつつあるのが現状だ。

久しぶりの競輪に対する感触、コロナ禍における活動の意図、引退を表明した戦友・雨谷一樹選手のこと、そしてパリオリンピックに向けて・・・

今の深谷選手が何を考えているのか?をたっぷり伺った。

スタイルを変えた?「今の深谷」の競輪の走り方

Q:オリンピックが延期となり、競輪への出走が増えていますが感触はどうですか?

今までの大会を控えての競輪とは違う気持ちで、意外と楽しく走れています。

Q:レース動画を見ていると、ギアが合っていないような印象も受けます。「スプリントのような迫力が出てないなあ」と、競技での姿を知ってる身としては不思議な気持ちで見てしまいました。

そうですね、競技で使っているギアと比べて競輪のギアは軽いので、まだ対応しきれていない部分があります。ワッキー(脇本雄太選手)とかと比べると、まだまだだと思います。

なんていうか、周回の段階から対応できてない感じがあるんですよね・・・ぐるぐる回ってからレースするのがかなり久々なので、普段やってないことをやっている感がまだ強いです。

Q:先日のサマーナイトフェスティバルではいつもと違ったアプローチをしたとのことでしたが。

初手の位置について、今までは元S級S班の選手として「受けて立つ」みたいな位置取りを意識していました。みんなが前を取りたくないような時こそ前を取って「力でねじ伏せに行くレース」を心掛けていたんです。でもみんな強くなってますが、自分は成績が落ちているし、競輪では弱くなってきたので、位置取りを選択する機会を増やした感じです。

変わりゆく「競輪」

Q:「みんな強くなって」というのは具体的にはどういうことでしょうか?レベルの底上げ?

脚力が上がっています。脚力の劣るマーク屋の選手が昔はチラホラいましたが、今は脚がないとレースに参加できない状況です。脚のない選手が減って、全体的に力が強くなって、その中で元気な若手が多いという印象です。今まで「受けて立つ」立場でいましたが、清水裕友松浦悠士のような年下の強い選手が出てきて、そこにチャレンジするような立場に変わりました。

清水裕友 松浦悠士

表現が難しいですけど、プレッシャーが減ったというか、レースを楽しめるようになったというか・・・。純粋に競技者として楽しめています。

Q:現在は「スピード競輪」とよく言われますが、全体の脚力が上がったことがそこに繋がった・・・ということでしょうか。

強い選手が増えたことで、昔の競輪のスタイルとは変わってきているのかもしれません。年齢のいったマーク屋の選手が、うまく若手をコントロールして勝っていた時代ではなくなってきました。良くも悪くも「文化」だったものが薄れている部分があります。

ライン戦って、そもそも「力のない選手たちが力のある選手を倒す」ために試行錯誤して出来たものでした。それが1周まわって無くなるのかもしれない・・・と思ったりもします。力のある選手だけが勝てる時代になるのかもしれません。

偽善と思われようが、悪いことをしているわけではない

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