最初の監督はコフィディスの社長!?

ご家族でトラック競技を行なっていたとか、どのようにトラック競技と関わり始めたのですか?

私の父はロードレースの選手でした。ただ、若い頃は「父とは違うことがしたい」と思っていて、陸上競技をやっていましたね。自転車競技は好きだったのですが、ロードレースを自分ではやりたいと思わなくて・・・ところがある日、トラック競技と出会い、これなら父と違う形で自転車競技がやれるなと思ったのです。

父は持久力が必要なロードレースを好みましたが、私はスプリントの競技だけやっていましたね。まぁ父に対する反発みたいなものがあったのかもしれません(笑)

お父さんはプロのロードレース選手だったんですか?

いいえ。純粋にプロではありません。父は州の中で強い選手だっただけで、他の仕事も持っていました。なので、私が家族の中で初めてのプロ選手ですね。フランスでは結構珍しいですよ。普通、父親がやっていたら子供も、という流れですから。

私がトラック競技を始めた頃、周りにいた優秀な選手は1人だけでした。リック・ミグレンという人で、後で知ったのですが、彼はコフィディスの社長の息子でした。

コフィディスの社長子息!?

当時はそれを知らず「一緒に練習しないか?」と聞き、彼も一人ぼっちだったので「うん、良いよ」と。そんな流れで、私の最初の監督はコフィディスの社長でした(笑)私が地元を離れ、フランスナショナルチームへ入った時、初めて彼がコフィディスの社長だと知り驚きましたよ。すごい偶然ですよね。

今でもコフィディスの決断に、彼は必ず関わります。彼はルーベに住んで、ルーベのレースでは結構スポンサードもしていますよ。

パリ〜ルーベのことですね!!?

私が最初に練習した競技場は、パリ〜ルーベのレースでゴールになっている場所でした。

私のレースデビューは、パリ〜ルーベの選手がゴールする前の、前座レースみたいなものでした。現在はもう行われなくなったようですが、昔はパリ〜ルーベに出場した選手たちが到着する前、スプリンターだけのレースが開催されていたのですよ。ケイリンやスプリントとかを行って、そのレースの後に、パリ〜ルーベの選手たちがゴールするんです。

パリ〜ルーベのレースを観ていたら、ロードレース選手になれなかったことをちょっとだけ後悔しましたね。あれは私にとって、世界で一番美しいレースです。すごいレースですよ。近くの似たようなパヴェ(石畳)コースを走って思いました。「なんて素敵なレースだ」と。

アジアとヨーロッパの自転車文化差

海外のトラック競技選手は、だいたい何かしら自転車が好きで始めます。日本人でトラック競技をやる選手たちとは、そこが少し違いますね。

競輪学校に来ている人たちは、キャリア、生活のために来ていて、そこで初めて自転車を知ることもあります。

私の知っているヨーロッパの選手たちは、まずはツール・ド・フランスを観て、パリ〜ルーベを観て、それで自転車を好きになり始め、自転車競技の道へ進むといった流れで選手になった人たちが多いです。まずは「自転車が好き」という想いがあります。

他のアジア諸国、ロシアもそうなんですけど、あまり自転車競技の文化は浸透していませんね。選手どころか、自転車競技そのものを知っている人が少ないですよね。ヨーロッパだと、昔からの選手や文化など、歴史を含めて知っていて、それでトラック競技を知るという流れです。少なくともフランスではそうだし、イタリアもそうですね。ベルギーなんか特に自転車文化の存在感は大きいですよ。

では、フランスでは自転車が一番メジャーなスポーツなんですか?

フランスではサッカーですね。サッカー、ラグビー、自転車の順番でしょうか?地域によって違いはありますが、南西に行けば行くほどラグビー、北部に行けば行くほどサッカーと自転車が人気です。

つまり、ブノワ監督の生まれた地域では自転車がポピュラーだった、と。

フランス北部は天気が一番悪いんですよ。でも、不思議なことに選手が一番多い地域でもある。ブルターニュ州も天気が悪いけど、選手が多い。南に行くほど選手の数は減っていく。フランスの不思議なところで、ステージと呼ぶキャンプは南でやるのに、南部出身の選手は少ないですね。

なぜですか?

しょうがないですよ。南の、海が近くにあって、温かな太陽があれば、違うことがやりたくなりますよ(笑)

😂 merci Seb #boat #var #sea #lalonde #holidays

Benoit VETUさん(@benoit_vetu)がシェアした投稿 –

私はニューカレドニアに住んでいたこともありますが、同じですよ。ニューカレドニアには、素晴らしい山とか海がたくさんあって、マウンテンバイクは盛んでしたが、ロードレースやトラック競技の選手はすごく少なかった。

自転車はフレームとか、なんでも高いからでしょうか…?

お金の問題じゃないと思いますよ。楽しい生活をすると、苦労するのは嫌いになっちゃうのかもしれません(笑)

アジア人が体格で劣るのことは無い