世界チャンプが抱える孤独と葛藤
Q:オリンピックでメダルを取るという軸があるから、ブレることはない?
はい。2025年は、UCIポイントの意味でもオリンピックに“関係のない年”ではありますが、その中でもオリンピックも見据えて練習やレースに取り組んでいます。自分は20代前半だった頃から、自転車で食べて行くことを決めてからは、オリンピックを目指して体のケアや食事管理もしっかりやってきました。全てはそういう意味では、「若手選手のなかでその意識を持っている選手がどれだけいるんだろうか?」と感じることもあります。
2017年の全日本選手権時の窪木(当時28歳)
Q:少し緩んでいるように感じてしまう、ということでしょうか?
それぞれのやり方があると思いますが、言動や行動から伝わってくるものが少ないように感じることもあるんです。そういった話は、実際にナショナルチームのメンバーともしました。
極端な話をすると、明確な目標や信念があれば、“ワガママ”とも取られかねないくらい自分本位に行動する選手がいても良いのかなとは思います。
オリンピックが終わって、2025年がスタートして半年。しっかりもう1度努力をしていかないと結果を残すことができない、と自分自信が強く感じているからこそ、余計にそういう雰囲気に敏感になってしまっているのかもしれません。
アルカンシェルへの想い
Q:直近には『全日本選手権』も迫っていますが、この大会に向けてはどう考えていますか?
先ほどの話にも通じますが、オリンピックを見据えているからこそ、この『全日本選手権』の結果だけにフォーカスして一喜一憂することはないのかなと思います。直前にイタリアのフィオレンツォーラでトラックの大会に出る予定なので、そこでまた違った感覚になるかもしれません。でも目標・目的を明確にしてレースを走ることが大切なのかなと考えています。大袈裟に言えば、オムニアムで4種目全部逃げ続けて勝つ、とか(笑)。
あと、タイムトライアル系の種目に関しては、シンプルに自分のベストの記録を更新したい、とは思っています。
Q:では、その先にある『世界選手権』については?
スクラッチ以外の種目でも結果を残したい、という気持ちはあります。
やっぱりアルカンシェルってすごく特別なもの。去年表彰台で袖を通した時は、信じられないくらい感動しました。アルカンシェルを着てレースに出る時は、身が引き締まるような思いですね。
自転車を降りるその瞬間まで
Q:現時点で、具体的に身に付けたい、伸ばしていきたい部分というのはどこになるのでしょうか?
スピードですね。オリンピックよりももっともっと先の未来を見ると、僕が目指すことになるのは『ツール・ド・フランス』ではなく競輪だと思っているので。
Q:競技の中長距離選手というカテゴリーで考えると、現時点で世界の舞台でもトップクラスのスピードがあるように思います。
速い方にはいると思います。特にレースの流れの中でのスピード、たとえばマディソンで5点を取りに行くというスピードには自信があります。ただ、去年の『世界選手権』の1kmタイムトライアルでも、デンマークのチームパシュートのメンバーであるロビン・スキーヴィル選手は僕よりも順位が上でした。そういう意味では、まだまだと感じています。
スクラッチで世界一となった翌日、1kmタイムトライアルに出場
Q:一貫して話されている、「強くなりたいという欲」や「オリンピックでのメダル」という思いは、年々強くなっているのでしょうか?
そうですね。根源的なモチベーションとしてずっと持ち続けていますし、強くなっていると思います。
Q:オリンピックでメダルを取ったら、また変わる?
変わらないかもしれないですね。自転車を降りるその瞬間まで。
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