「Make it happen」……~it~を成し遂げる

オリンピック代表応援特設サイトが現在公開中だが、サイト内ではオリンピックへ向けて、それぞれの成し遂げたい「it=成し遂げたいこと」について話を伺う。

チームの中では最多を誇る3回目のオリンピック出場となる長迫吉拓選手。過去2回、BMXレーシング種目でのオリンピック出場の経験を経て、いざトラック競技でオリンピック出場へ。チームスプリント第1走のエキスパートが成し遂げたい「it」とは?

長迫吉拓の「it」~過去の自分に誇れる“イマ”~

「4歳の時にBMXに出会い、すぐにBMXの虜となって、無我夢中でここまでやってきました。当時は想像もできなかったのですが、自転車ひとつで、たくさんの国に行って、たくさんの人に出会うことができました。

長迫吉拓 提供写真

本人曰く、一番古い写真

長迫吉拓 提供写真

7歳の長迫少年

自転車があったから、今の自分があります。そのひとつのゴールとして、オリンピックを最高の形で終えることで、僕のitである『過去の自分に誇れる“イマ”』になれると思います」

——自転車が好きで好きで仕方なかった当時の感覚。長迫の脳裏に焼き付いている記憶がある。

「人間の記憶って、さまざまなものに結びついていると思うのですが、僕の場合は音と強く結びついています。BMXは海外のカルチャーが強く、子どもの頃に見ていたレース映像でも、ずーっと洋楽が流れていたんです。当時の音楽を聴くと、速い選手を見た時のワクワク感や、とにかく自転車に乗りたいと思っていた気持ちがすぐに蘇ってきます」

長迫吉拓 提供写真

こちらも7歳頃、小さい時から洋楽を聴いていた

「自分が子どもの頃を振り返ってみると、最初から優秀な選手だったわけではなく、ギリギリ表彰台に乗れるかどうかという選手でした。

レースで勝てない=楽しくないと感じて自転車を辞めてしまう子も多い中、勝つことが目的ではなく、『好き』『楽しい』といった純粋な気持ちだけでやってきたのが、今に繋がっている。そう、今の立場になって思います」

長迫吉拓, 男子チームスプリント, Men's Team Sprint, 19th Asian Games, Hangzhou, China

——今回のオリンピックが、そうやって繋がってきたことの“最後を締めくくる舞台”でもある。

「当時の自分に話しかけることはできないですけれど、オリンピックを最高の形で終えることができれば、『その気持ちのまま自転車を続ければいいよ』って胸を張って言えると思います。誰かのために何かを成し遂げるといった答えではありませんが、自分がやってきたこと、感じてきたこと、パリオリンピックはそれらをまとめる舞台にしたいと思っています」

長迫の1レースは17秒ほど。その17秒に全てを注ぐチームスプリント第1走が長迫。パリでの”17秒”が長迫の競技者人生のまとめとなる。