気付いたらいつの間にか良い位置にいて、2着・3着に入っている……47歳のベテラン選手・佐藤慎太郎はそのようなレースをする。
「追い込み屋」という「前の選手と組んで、前の選手を守りながら最後に追い込んでいく」ことを自身の基本戦術とする佐藤。しかし希代の追い込み屋は「もはや追い込みも先行選手と同じくらいの脚がなければできない、そして脚がなければ『道』を見つけるだけの余裕もない」と刻々と変わりゆく現代のスピード競輪を語る。
令和を生きる追い込み屋の「矜持」が語られる、ロングインタビュー。
プロフィール
1976年生まれ、福島78期。
2003年〜2006年にKEIRINグランプリ出場、そして13年ぶりに出場した2019年のKEIRINグランプリで優勝して以降、4年連続でKEIRINグランプリ出場。2023年は高松宮記念杯、寬仁親王牌と2つのG1レースで準優勝し、獲得賞金4位で9回目のグランプリ出場権を獲得した。47歳にして自らの言葉でもある「限界?気のせいだよ!」を体現する。
沖縄からはいさい!
Q:このインタビューは冬季移動先の沖縄で実施しています。沖縄ではどのように練習をしていますか?
週に1回は沖縄の練習仲間とバイク誘導を交代でやるような練習をします。でも基本は1人で練習していますね。
Q:ナショナルチームも沖縄で合宿中です。また練習に参加されたのでしょうか?
今回は様子を観に行っただけ、参加はしていません。大事な時期ですからね。ブノワ(・ベトゥテクニカルディレクター)に「自転車どうした?」って聞かれたけど「忘れちゃった〜」って言いました(笑)
↓結局参加したようだ
ご指導ありがとうございました!
ガハハ! pic.twitter.com/1nSdcBvLoV— 佐藤慎太郎 (@KEIRIN_SHINTARO) December 18, 2023
やっぱり彼らはすごい練習をしていますね。インターバルが短いのも特徴的だと思います。もし同じ練習をするとして、僕はもうちょっと長く休みますからね。
Q:ナショナルチームは20分くらいでやってますが、佐藤選手だと?
3〜40分休みますね。そうでないとできません。
Q:沖縄はトレーニング環境としてどうですか?
アドバンテージは大きいと思います。まず1日を始めるにあたって、寒さとの戦いがない。「布団から出たくない」「外寒そうだな」とか思う時点でマイナスからのスタートですもん。朝起きてパッと布団から出て、顔を洗いに洗面所に行ける。この時点で一歩リードしています。
Q:でも佐藤選手の大好きなラーメンのバリエーションが、こちらでは少ないのではないでしょうか。
そうですねえ。白河ラーメンが恋しくなります。沖縄には一軒もないですからね。向こうに行った時は毎日昼がラーメンになってしまいます。「これだなあ、これ!」って。
でも、実は麺減らして頼んでますよ。ブタ増し、ニンニク増し、アブラ少なめ、麺少なめ。我慢しすぎも良くありませんからね。
47歳、お肌ピチピチ、その秘密
Q:新山響平という一般男性じゃないマニアの方からタレコミが入っているんですが……
聞いたことあるなあ(笑)!
Q:佐藤選手、年齢の割には肌がピチピチしすぎていないか?という疑念が存在しているようです。
実はボトックス注射をしてます……っていうのは冗談ですよ!そもそも注射は全般的にドーピングに引っかかりますしね。
肌の状態が良いのはプロテインの効果なんじゃないでしょうか。一般的な僕くらいの年齢の人に比べて、栄養面が良いと思います。
プロテインもですし、タンパク質の多い食事もですね。常に体の中がアミノ酸で満たされているイメージです。筋肉に使われなかった分が髪の毛とか爪、皮膚に使われているんじゃないでしょうか。
体を作るのが僕たちの仕事だと思っています。体に栄養が足りていないのが一番まずい、それをきちんと避けられていると思いますよ。あと酸性水で顔を洗ったりしてます。肌に良いそうです。
Q:肌のケアも意識してされているんですか?
肌の状態が良くないと、筋肉もつっぱってくるんです。全身の皮膚の状態が良い方が、筋肉もリラックスできます。頭皮も揉んでいますよ。薄毛防止とか美容の観点ではなく、筋肉の観点で気にしています。
筋肉を思ってプロテインを摂り、それが美肌につながるということです。
Q:なるほど、筋肉を愛するが故……筋肉に名前つけたりしていますか?
若い時は左胸筋が「キャサリン」と右胸筋を「ボブ」と呼んでいましたね。左右の筋肉別々に動かせるので、おしゃべりさせてましたよ(笑)
発信することはS級S班としての責任
Q:ご自身のコラムで「競輪広報係・係長」を自称されています。
コラムはS班としての責任というか「競輪のために自分ができること」だと思っています。自分が出ることによって競輪の認知度が少しでも上がれば、という思いです。
本当は練習に集中したい気持ちもありますよ。でもこういう責任感、お世話になった競輪に何か恩返しを、ということを考えるようになったのが、若い頃からの変化ですね。若い時はそんなことまで考えませんでした。
Q:文中で伝えていることに説得力がありますし、独特のユニークさもあるなと感じながら拝読しています。
その時思いついたことを言ってるだけですよ!普段から色々構想しておいて、そこからつまんで原稿を提出する感じです。
書くということは結構大変な作業です。本来競輪選手として必要でないことをやってるわけですからね。でも自分はトップ9人の1人で、誰かがやらなくてはいけないことだと思っています。僕はベテランでもありますし、そういう立場であるべきだと捉えて、やっています。
北を引っ張るのは新田祐大
Q:北日本を引っ張るのは、やはりベテランの佐藤選手でしょうか?
リーダーは新田だと思いますよ。側から見ていて「しっかりまとめよう」という気持ちが出ています。俺は「ついてこい!」って感じじゃない、自分のことで精一杯です。新田はそういうところが上手だし、新田と(小松崎)大地のコンビは良いと思います。うまくまとめてくれると思いますよ。