2023年最初のネーションズカップ(インドネシア・ジャカルタ)でケイリン銅メダルを獲得し、パリオリンピックに向けて好調さをアピールした梅川風子。しかし大本命である8月の世界選手権では思うような結果を得られず「勝ち上がりたいと強く思うが故に、消極的になってしまった」と語る。

この学びはこの先どのように発揮されるのか。ハードな沖縄合宿のさなかにお話を伺った、「今の梅川」に迫るインタビュー。

プロフィール

1991年生まれ、東京112期。

ナショナルチームメンバーとしても活躍し、オリンピック出場&日本代表としての椅子を争う梅川。『競輪祭女子王座戦』では完全優勝と同時に節目の通算200勝を達成し、地元・立川での栄冠を狙う。

沖縄で感じる成長

Q:沖縄合宿中にお話を伺っています。今年は酒井亜樹選手もナショナルチームに加わり、チームスプリント第1走の役割はバトンパスした形になりました。良い影響となりそうでしょうか?

チームスプリントの第1走ばかりだったし、それしか選択肢がなく、それがベストだと思ってやってたけど……でも1走だけの時はキツかったです。チャンスは減るかもしれませんが、自分の持ち味を出すには個人種目の方が良いかなと感じています。

あれは才能を伸ばすタイプじゃないと無理。アキちゃん(酒井亜樹)が来てくれて良かったです。スペシャリストだし、今後はアキちゃんに任せるのが良いと思います。

酒井亜樹

Q:競技は、パリで区切りの予定でしょうか?

はい。オリンピックに出ても、出なくても、そこで終わりです。

Q:競技と競輪、どっちの雰囲気が好きですか?

雰囲気は競技の方が好きです。会場とか、レースに向かう周りの空気とか。

でも競技の方が負うダメージも多いですね。勝った負けたのダメージもあるし、脚のダメージもあるし……

競輪は1日1本ですごく疲れるけど、そういうダメージは少ないです。

Q:1日1本は出しきれますか?

ようやく体力がついてきたのか、ちょっと平気になってきました。前は1日1本でもヘタレこんでいました。競技の力がついてきたのか……

Q:余裕が出てきたのでしょうか。でもそれで、ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチに「それは出し切ってないぞ」と言われたりは?

ないですね。ジェイソンは「出し切って、さらに20分で回復して同じように走れ」と言う人です。1本で動けなくなることを求めているわけではありません。

ジェイソン・ニブレット 短距離ヘッドコーチ

ガールズケイリン1本ならそれでも良いですけれど、競技でだいぶ鍛えられたのか、動けなくなることは無くなってきました。

Q:以前の合宿では金曜日のメニューの2本目でアンデッド化していましたもんね。

そうそう。3本目はもうダメで、4本目は乗ってるだけって感じでした。今はそれがなくて、なんとか4本できるようになってきました。成長したな〜って思います。

Q:2025年には女子1mTTという楽しそうなイベントも始まりますよ!

観客として楽しみます。絶対やらないよ、1kmだけは(笑)!1kmは競輪学校(現:養成所)で卒業です。

「あれ獲れちゃった」銅メダル

Q:2023年を振り返っていかがですか?

インドネシアのネーションズカップ第1戦(2月)でメダルが獲れたのは良かったです。あの頃はチームスプリントのスタートの練習ばかりしていて、自信のない状態だったのですが、逆に気負いなくやることをやって走れたと思います。でもそこからはちょっと微妙でした。

Q:結果が出ると、自信もついてくる?

自信というか……あの時はケイリンやスプリントの練習を全くしていなかったので、自信も何もなかったんです。そんな中でメダルが獲れたから「あれ獲れちゃった」という感じ。巡ってきた!チャンスきた!くらいの感じでしたね。

そこから自信ということもなく世界選手権を迎えて、でもだんだん自分の中でのケイリンの流れができつつはいました。「世界選、やってやろう」というところで消極的になってしまって……そういうのが問題なんだな、ということには気づけました。

勝ちを意識するが故に

Q:消極的なのは、どういう理由から来たものだったんでしょう?

今考えればですが……1回戦で勝ち上がれたらすごくラッキーですよね。あのレースでは確か2着までが勝ち上がりで、あとは敗者復活戦だったはず。そこを考え過ぎてしまったなと思います。他のレースの時には「ダメなら敗者復活戦で勝てばいい」という感じで、そこまで考えていなかった。

※1回戦は先頭争いをしてブルーバンド(トラックの内側)を走ったと判断され降格、敗者復活戦4着

世界選手権になると「2着以内」をすごく重要視してしまいました。脚が問題というよりは、意識の問題でした。

梅川の世界選手権結果一覧

チームスプリント 10位48.148
スプリント 21位(予選タイム:10.894
ケイリン 23位

Q:欲とでも言いましょうか?

欲ですね……「勝ち上がりたい」と強く思うが故に消極的になって、残り1周を「ここなら2着に入れる」と思う位置で迎えていました。1着を狙って思いっきり走ってるわけじゃない。2023年の「悪いところ」に気づいたのが、その世界選手権でした。一番大事なところで気づいたわけです。

Q:「絶対勝ちたい」と思うからこそ難しいですね。

今後もこういうレースが続いてしまったら、絶対にいけない。そういう点で勉強になりました。これからも「ここで動かなければオリンピックに選ばれない」「うまく勝ち上がらなきゃ」というタイミングで2着や3着を狙うような走りをしたら、絶対ダメなんだなって。そう気づけた、という点では良かったです。

1本1本1着を狙うこと。その結果2着3着はあるかもしれないけれど、貪欲に1位を目指すことが絶対大事なんだ、とわかった1年でした。

また、その意識がグランプリ出場への結果にも繋がったんだと思います。

初代づくしな梅川風子

Q:競輪祭のレースでは女子王座戦とタイトル付けされたG1レース、その初代女王となりました。名前が刻まれますね。

実は私結構、初代獲ってるんですよ。初代フレッシュクイーンでしょ、初代グランプリトライアルでしょ。

Q:失礼しました。というか初代づくしじゃないですか?

初代づくしなんですよ、割と。でもどうせこれから毎年やっていくことですから、あまり初代云々は気にしていません。

パブロフの風子

Q:合宿が終わって中3日・4日くらいでレースでしょうか?

そうですね。今もぎっくり腰しちゃったし、追い込まれてる……競輪祭が終わって頑張るぞ!って時にウェイトでぎっくり腰、ヤバいです。今日も本当なら4本のところを3本、しかも3本目が走りきれずに終わりました。

だから状態は上げたい。そうして目の前の1本を獲りに行きたいと思ってます。

Q:沖縄合宿からシームレスにグランプリに入りますが、モードの切り替えは問題なくできますか?

一気に入れるもんです。というのも皆さんが会場をそういう雰囲気に作ってくれていますから(笑)嫌でもモードに入っちゃいます。競輪選手だから、競輪場の音や匂いをかいだり聞いたりしていたら、嫌でも前検日でしっかり入ります。慣らされています。

1度くらい経験したっていいよね

Q:ガールズグランプリをどのように感じてますか?

楽しくは……ないですね。とにかく状態を上げて臨みたいです。なんの不安もなく、全力で走れるようにしたいです。

Q:気になる選手はいますか?

う〜ん……みんな気になることは気になりますが、動き的にキーパーソンになる選手は確かにいますね。動くのか、動かないのか。どの選手も普段は動いているけれど、こういうレースでは動かない、という場合があります。逆にこういうレースだからこそ「獲る」より「動きたい」選手もいる。そこら辺をどう読むか、もあると思います。

サトミナは、正直頭ひとつ抜けています。でもあのギアで踏めば、あとはみんな一緒だと思います。だからこそどの位置にいるかが大事です。車番も前の方なので、結構チャンスだと思います。

グランプリ優勝、1度くらい経験したっていいよねえ(笑)

Q:レースのシミュレーションはしてますか?

今はまったく。直前には考えるかなと思います。合宿が終わってからかな。数日あれば結構考えられるし、当日もどうせずっと考えていますからね。

Q:改めてガールズグランプリへの気持ちを聞かせてください。

獲りたいです。でも、1着を獲ることが目的ではありますが「今までした沢山の経験や失敗を生かした走りをできたな」と終わった時に思えるようにしたいと思っています。充実も後悔も紙一重の世界だと思うので。

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