「最高潮を迎えるのはこれから」
Q:『2023全日本選手権トラック』でのAチーム(ポディウムチーム)の結果については、どのように見ていますか?
良い結果だったと思いますが、全日本タイトルは私たちが目指すゴールではありません。私たちはさらに上を目指しています。アジアチャンピオンになることや、その先の「世界一」を目指しています。
全日本選手権の準備期間ではさらにその先を見越して、とても過酷なトレーニングを課しました。疲労が蓄積している中で走っていた選手もいたでしょう。そうした中で良い結果を残せたことは、アジア選手権や世界選手権に向けて、良い時間を過ごせていたと言えるでしょう。
ネーションズカップでも良い成績を残した選手はいましたが、その時から世界選手権に向けてトレーニングを行っていたので、選手たちが最高潮を迎えるのはこれからです。そうした観点から現段階でのパフォーマンスを評価するべきです。
疲労が溜まっている中で良い結果を出し自信をつけることも重要ですが、世界選手権に向けて何が必要かを知ることがより重要です。
アジア選手権まであと少しですが、状態は悪くないと思います。
負けられない大会
Q:『2023アジア選手権トラック』は『2023世界選手権トラック』の選考大会として捉えていますか?
大陸チャンピオン枠で『2023世界選手権トラック』への出場を確定させること、そして『パリ2024オリンピック』の出場枠を得るためのオリンピックポイントの獲得、という2つの目的があります。
世界選手権の大陸チャンピオン枠を得られれば、アジア選手権の優勝者が世界選手権に出場できます。大陸チャンピオン枠を獲得できないと、ネーションズカップの成績やこれからのパフォーマンスを鑑みて、ナショナルチーム内で出場枠を争わなければなりません。これは男女ともに当てはまることです。
大陸チャンピオン枠を獲得することが理想的ですが、アジア選手権でもマレーシアのアジスルハスニ・アワンやムハマド・シャロームなど強力な選手も出場してくるでしょう。中国も各大会で上位の成績を収めていますし、簡単に勝てる大会とはならないと思います。
Q:中国チームの現在のパフォーマンスは良いものでしょうか?
他の国のチームがどのようなトレーニングをしているかわからないので確かなことは言えませんが、良いと思います。特にチームスプリントのレベルが高まっています。個人種目では選手によって身体能力に差があるので、戦術面に力を入れている印象があります。
以前と違って中国はチーム全体で1つの組織としてトレーニングを積んでいますし、テオ・ボスがコーチに就任してからは、より向上が見られます。
Q:中国のテオ・ボスコーチをどのように評価していますか?
チームスプリントやスプリントで結果を出しているので、良い影響を与えているのではないでしょうか。
全選手に世界選手権へ出場する素質がある
Q:『2023アジア選手権トラック』は重要な大会ですが、今大会の結果が『2023世界選手権トラック』の選考に直接影響するのでしょうか。
YesでありNoでもあります。
ネーションズカップそしてアジア選手権、両方で良い結果を残さなければ、世界選手権のメンバーには選ばれないという意識は、それぞれの選手が持っていると思います。
厳しいかもしれませんが、ハイレベルな環境においては当たり前のことです。与えられたチャンスを物にできなければ、世界選手権でもチャンスを掴むことはできません。出場機会を得た大会で結果を残した選手に、次のチャンスが与えられていきます。
現在の日本チームでは、全選手に世界選手権へ出場する能力があるので、誰が勝ち上がり、もしくは落選してしまっても驚きではありません。
私が日本チームに来てから様々な選手がいました。河端朋之、新田祐大、深谷知広、渡邉一成、ワッキー(脇本雄太)など。出場枠をチーム内で争わなければならない状況は彼らの時代からありましたし、現体制で初めて起こっていることではありません。
素質があり、能力が高い選手でも、いざという時に実力を発揮できず、チャンスを逃してしまうこともあります。
とにかくアジア選手権では「大陸チャンピオン枠を確実に獲得しつつ、その他の選手も上位の結果を残すこと」。そうすることで、世界選手権の出場枠をより多く獲得していくことが重要です。
世界選手権への出場枠を増やすため、そしてオリンピックポイントを得るために重要な『2023アジア選手権トラック』。注目のレースは6月14日からマレーシア・ニライにて行われる。MoreCADENCEは現地にてこの重要な大会を取材予定。日本チームの活躍の報せを楽しみにしていただきたい。