若手世代への期待と心配
Q:ネーションズカップの結果はご覧になりましたか?
この前のネーションズカップの話は(太田)りゆとかサトミナ(佐藤水菜)とかから聞いています。メダルを獲ったことは凄いのですが「本当に、オリンピックに向けたフルメンバーが出てきたネーションズカップだったのか?」と考えると、疑問が湧きますね。
エジプト(第2戦)に関してはハリー・ラブレイセンがケイリンの序盤で敗退していましたけど、「本当にラブレイセン、やる気あったのか?」とか思ってしまう。
Q:でもそうした結果を今のナショナルチームが得ていることも、脇本選手はじめとした東京オリンピック世代の頑張りがあったからこそです。
盛り上がってくれること自体は嬉しいと感じてます。
でもどうなんでしょうね、応援はしてるんですけど「この結果で調子に乗らないように」と思ってしまいます。そういうの、絶対あるので。
Q:若い選手は特に心配でしょうか?
それがめっちゃ怖いですね。ネーションズカップで自信をつけたところで、世界選手権でボコボコにされたら目も当てられない。僕はあくまで世界選手権を基準にするべきだと思います。
ネーションズカップ……僕らの時の名称はワールドカップでしたが、ああいうのは大会だと思ってはいけない。本当に調整してきた人間の実力を基準にしなければいけないので、世界選手権こそ基準にするべきです。
Q:そう思うと、パリオリンピックまでは次の世界選手権(2023年8月)しかない状況です。若い選手は本当の戦いを1回しか経験できません。
僕らの時は、比較的経験者が多かったですからね。僕と新田さんに関しては「散々味わってきた感覚」でした。だから今の若手に対して正直なところ、「大丈夫?」はあります。加えて、オリンピックはさらに「別物」ですから。
オリンピック期間中、テレビは見るな
オリンピックについて1つだけアドバイスをするとしたら、「テレビは見るな」です。
Q:それはどういうことでしょう?
自転車トラック競技って、オリンピック期間のラストの方です。自分の番までに、いろんなオリンピック種目の結果を見ようと思えば見られるわけです……でも絶っ対見ちゃいけない。
絶っ……対!
Q:めっちゃ念押ししますね(笑)
というのも、気持ちが乗り移っちゃうから。緊張が乗り移っちゃうんです。メンタルの面では一番危険なことです。
開会式から2週間ほどあるのですが、その期間、別の競技に付き合っていたら心臓が持ちません。
Q:それは日本人選手がメダルを獲っていようがいまいが、関係なくですよね?
はい、僕はそういうタイプです。見ちゃダメ!……新田さんはガッツリ見てましたけどね(笑)
全日本選手権にはチームスプリントで
Q:今年の全日本選手権では、解説席に座ったりはしないんでしょうか?
いえ、出場します。チームスプリントに出る予定です。新山(響平)と僕と(長迫)吉拓なので、どっちが2走をやるかは、新山とじゃんけんです。
Q:決め方が……
普通3走が罰ゲームですけれど、僕は3走が良いし、新山も「僕も3走がいいです」って(笑)恥をかきたくないから……
※長迫選手は現役ナショナルチームのチームスプリント1走専任走者。2走は長迫選手のスタートについていけず、引き離されてしまう(恥をかく)可能性がある
でも新山か僕かといえば、僕の方が2走向きなんですかね。スタートはどっこいどっこいだと思いますが。
Q:あとは脇本選手の体調もありますよね。スタートでグッと力を出すと、骨にきそう。
やばいと思います!
Q:ではチームスプリントの後は解説をやって下さい!
いえ、帰ります(笑)。開催はたぶんないんですけど、別で合宿があるので。こんな老いぼれを駆り出さないでください。
Q:(笑)思えば、31歳でオリンピックに出たのはすごいことでしたね。新田選手に至っては35歳でオリンピックです。
鉄人です、あの人は。
2022年は競輪でトップに立ち、増々注目度の上がっていく脇本雄太。34歳を迎え、その走りや人間性にはこれから円熟味が加わっていくのだろう。果たして今年の脇本はどんな姿を見せてくれるのだろうか。