心、体、技、その全てを使って争うKEIRINグランプリ。1年に一度の一発勝負で、9人それぞれが持った思いを振り返る。

何度も繰り返す「郡司のおかげ」

2020年の頂を決める戦いを制したのは、39歳でグランプリ初出場を果たした和田健太郎だった。勝負が決まった後、何度も両手を掲げながら周回する和田に、同じ南関東ラインとして先行した郡司浩平が寄り添った。
和田にとって、どんな祝福の声よりも、郡司に言われた「おめでとうございます」が響いた。

「いやーすごいですね、和田さん。すごいっすね」
レースを終え、額に汗を残したまま検車場で記者に囲まれた郡司は、噛み締めるように言葉を発した。
レース後すぐ表彰式に記者会見と引っ張りだことなった和田にその言葉を伝えると、それまでにないほど豪快に声を上げて笑った。
「本当に、郡司に褒められるのが何よりも一番嬉しいかもしれないです。後輩なんですけど、もう先輩みたいですもん。やってること自体がもうなんか、全て。一緒に走っているとき、常に郡司のおかげだなって思います。9割9分、そう思っていいと思います」
和田は、その前にも後にも何度言ったか分からないほどに「郡司のおかげ」と口にした。

このレースでの作戦について、郡司と和田は事前に話をしていたそうだ。
「こんなのはどう?というのは、自分でもちょっと言ってみたりしました。でも最後は、やっぱり郡司が前で頑張ることなので、『もう本当に俺のことを気にしなくていいから、地元だし、もうどんな形、どんな手を使ってでも優勝することをやってくれ、そのためのサポートをする』っていうのを言って。
何を、とは言わないんですけど、あるパターンになったときこういうことをとちょっとお願いされたんです。珍しく。笑いながら、『初めてですね、こんなお願いするの』って浩平も言っていました」

一方で郡司はレースの前日、和田に対して期待することについてこう話していた。
「和田さん自身も、多分僕の仕掛け次第というか、そういうところはあると思うんですけど。その中で1年間、和田さんとは一番連携してきて、良いときも悪いときもありましたけど、お互い集大成というか、走って悔いの残らないレースができればいいなっていう思いはあるので。特に僕から期待っていうものはないです。本当に和田さんも勝てるように、悔いなく走ってほしいなっていうだけです」

それぞれのラインとその思惑

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