2020年7月末~8月上旬に『オリンピックシミュレーション』が実施された。これは、東京オリンピック本番を想定したスケジュールでレースを実施するトレーニングの一環。オリンピック出場選手にとっては“プレ五輪”であり、出場しない選手たちにとってはコロナ禍の中で滅多に無い実戦の機会であった。

このオリンピックシミュレーションは成功、と語ったのはブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチ。その言葉の中には『HPCJC』へ対する感謝の言葉が含まれていた。

男子ケイリン1回戦, オリンピックシュミレーション

この『HPCJC』とは何なのなのか・・?本記事より、度々目にはするもののイマイチ知られていない「HPCJCとは何か?」を紐解くシリーズの第1弾として、組織の目的などをHPCJC全体統括ミゲル・トーレス氏に尋ねた。

HPCJCって…何?

Q:まずはHPCJCが、どういった組織かを教えて下さい。

HPCJCとは『High Performance Center of Japan Cycling』の略で、日本自転車競技連盟(通称JCF)のトラック強化指定選手のトレーニングセンターとして、世界選手権やオリンピックでメダルを獲得するためにアスリートを強化、育成する組織です。
ここに来れば全てが揃っている、夢を叶えるために集中できる、そんな環境作りに専念しています。

組織にはコーチや選手をはじめ、全体オペレーション統括者(ミゲル氏)、PR、メディカル、メンタルコーチ、栄養士、パフォーマンス分析班、メカニックなど世界各国から一流のスタッフが在籍しています。

近年、日本がトラック競技で世界と戦えていますが、その理由の大部分に我々の存在があると思います。一定レベルへ達した選手たちを、更なる高みへ押し上げるために存在する、それがHPCJCです。

Q:HPCJCはトラック競技のみが対象ですか?

最終的な目標は全ての自転車競技のトレーニングセンターとなることです。ただし、現状ではリソースが足りなさ過ぎるので、トラック競技を通じて我々が、そして日本がどれだけのことが出来るのか、それをまずは証明していきたいと思います。

これまでも結果は出してきましたが、東京オリンピックで活躍する事により、関連する人々や企業の方々へ「この方法で日本は強くなるのだ」という強いメッセージを打ち出すことが出来ると思います。その結果、他の自転車競技もトラック競技と同様に強化していけたらと思います。そして、きちんとした情報を公開することで、人・企業・自治体などの理解も得なければならないと思います。

これまでも努力はしてきましたが、まだ我々の存在は行き届いていないでしょう。例えば長迫吉拓選手、彼のBMXとトラック競技の二刀流に対して我々はとても嬉しく思っています。このような種目、競技を超えた交わりを提供していくのも我々の仕事の一つです。今我々が持っているリソースも、将来的に他競技へシェアしていかなければなりません。

HPCJCの立ち位置

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