後編では長迫吉拓選手がBMXトラック競技を二刀流でやっていくに至る背景、なぜアメリカへ渡ったのかを中心に訊ねた。浮き彫りになったのは自転車競技へかける想い。語られた「選手がレースできる状況じゃなかった」とは?

500社はあたった。練習とバイト、スポンサー探しに明け暮れた日々/長迫吉拓インタビュー前編

BMXとトラック二刀流の背景

BMXに活かしたくて始めたトラック競技

長迫吉拓

2017-18トラックワールドカップ4戦 / Photo : Mizuki Ida

BMXは一通りやりきったって気持ちがあって、トラックに来たのでしょうか?それともトラックをBMXに活かしたい、どちらでしょうか?

スイスのWCCにもベロドローム(自転車競技場)があって、冬の間は雪だし気分転換でトラックに何回か乗っていたんですよ。その時に「楽しいなー」って思って。

リオデジャネイロオリンピックが自分の目標とは程遠い結果で終わって、自分には力が足りなかったし、トラック競技が自分の基本となるパワーを上げてくれるんじゃないか?と思って始めたんですよ。

両方やるのではなく、トラック競技をBMXに活かしたくて始めたということだよね?

そうです、最初は。

2016年の夏頃、冬にあるトラックのナショナルチーム合宿に誘ってもらったんです。10月頃にテストしに来てって言われて、行ってみたらブノワコーチと連盟の人がいましたね。テストしてみたら、そこそこのタイムが出て、それでトラックのチームに誘われました。

ペダルを「踏む」だけ、それがすごい楽しい

トラック競技は楽しいですか?

楽しいです。トラック競技はBMXと違って、踏むだけなんですよ。BMXはジャンプとか色んな障害物を越えたり色々あるんです。トラックは踏むだけ。でもね、それがすごい楽しいんです。

踏むだけに見えて、その中に凄いテクニックだったり、ライン取りだとか、色々な要素がいっぱいあるので、すごい楽しいです。

自転車に座ってる時、それは僕のなかで休憩

手こずってる所とかはあるんですか?

僕が10年以上やってきたBMXは、基本的に立って競技を行います。トラック競技はどっちかっていうと座ってペダルを踏むことが多いんですよ。座って走ってスピードに乗せていくというのが僕にとっては課題ですね。だからチームスプリントの第1走では、スタンディングスタートだから前半は速いんですけど、後半は遅いんですよ(笑)

座ってる時、それは僕にとっては休憩なんです。立つ=行く、座る=座るなんで(笑)

トラックの場合、座って力を伝えないと、ちゃんと速くならないって事ですね。

ただそれが今僕が1番頑張らないといけないところなんです。ワールドカップの2戦はだいぶポジティブな結果だったんですけど、ブノワコーチが言うには「最初の半周は特別なものが必要、でも残りの半周に秘密はなくて、日頃のトレーニングを続けていけば作れるところだから、なんにも心配はいらない」って言われました。

だから、将来的な結果はそこまで心配はしてないんですけど、今すぐその力が欲しいっていう気持ちもあります。

二刀流は僕にしかできないから、やっていきたい

長迫吉拓

2017-18トラックワールドカップ2戦

「BMXシーズンの半年はトラックから離れて、またトラックに戻ってくるのは難しい」と話していたけど、これからもそんな感じに?

うーん、もう少しトラックに寄ったトレーニングをしていきたいなって思いますね。

トラックのギアはすごく重くて、慣れるまで時間が掛かかるから、その慣れる時間がもったないですね。シーズンの始まる前に2〜3週間慣れてから、慣れた状態をキープしてトレーニングに入るとか、どうやったらBMXとのギャップを感じずに移行ができるか、というのが課題ですね。

やっぱ二刀流で行きたいって事ですね?

難しいって言われるんですけど、僕にしかできないと思うので、頑張ってやっていきたいですね。

天才を支える膨大な努力

長迫吉拓

2017-18トラックワールドカップ4戦

昔から、わりと天才って呼ばれたりしてましたね(笑)。ただ何でも出来るって言われてきたんですけど、実はどれも何時間も練習してきたからですよ。

BMXに関しては、なんとなく見ただけでできるとかは、小さい頃から練習してきたものがあるから、出来ているのかなと思います。

性格が「勝ちたがりの悔しがりで、どちらかというと陰で努力」するタイプ。もちろんみんなと同じ練習をするのですが、それだけじゃ足りないって思いますからね。

今は(ナショナルチームの)練習の効率が良いので、それ以上いるか?って言われたらわからないですが・・・・テクニック面に関しては誰も見てないところで努力、って感じですかね。

アメリカは難しい場所だから、勝ちたい。